Case145 自殺未遂を起こした労働者を専門家の助言を得ずに職場復帰させた結果自殺に至ったとして会社の安全配慮義務違反を認めた事案・市川エフエム放送事件・東京高判平28.4.27労判1158.147

(事案の概要)

 本件労働者は、職場の人間関係の悩み等からうつ状態となり欠勤し自殺未遂を起こしました。本件労働者と面談した医師は、被告会社の代表者に対して、本件労働者に臨床心理士の診察を受けさせることを強く勧め、臨床心理士が会社代表者と一度話をしたいと思っている旨を伝えましたが、会社代表者は、本件労働者が本気で自殺を図ったと考えていなかったことから、自殺未遂の数日後に自己の判断で本件労働者を復帰させました。本件労働者は、その約10日後に自殺しました。

 本件は、本件労働者の姉である原告が、本件労働者の自殺について会社の安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、本件労働者の精神状態や他の従業員との人間関係に改善が見られない状態で職場復帰を認めれば、本件労働者が再度自殺を試みることは予想できたとしました。

 そして、会社代表者は、本件労働者の精神状態や自殺リスクについて非常に軽く考えており、専門家の助言を得る機会が十分にあったにもかかわらず、それらを行うこともせず、職場の人間関係を特別調整することもしない状態で、本件労働者を自分だけの判断で職場に復帰させた上に、従前以上の業務を担当させ、その結果本件労働者が自殺に至ったとして、会社の安全配慮義務違反を認めました。

 判決は、逸失利益約1900万円及び慰謝料2000万円等の損害を認めたうえ、本件労働者の過失割合を3割として過失相殺し、会社に対して約3000万円の損害賠償を命じました。

※上告却下・不受理により確定

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