企画業務型裁量労働制って何?

1 はじめに

 裁量労働制とは、実際に何時間労働したかにかかわらず、あらかじめ定められた一定時間働いたものとみなす、労働時間のみなし制の一種です。

 例えば、みなし労働時間が週40時間と定められていれば、労働者が実際には週48時間働いても、週40時間だけ働いたものとみなされ、残業代は発生しなくなります

2 裁量労働制の種類

 裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と、企画業務型裁量労働制の2種類があり、それぞれ適用要件が異なっています。

>専門業務型裁量労働制についてはこちら

3 企画業務型裁量労働制の適用要件

⑴ 対象業務

 企画業務型裁量労働は、事業運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行手段や時間配分の決定等に関して使用者が具体的な指示をしないこととする業務が対象です(労基法38条の4第1項1号)。

 専門業務型裁量労働制のように、対象業務が法定されているわけではなく、抽象的な要件に当てはまれば広く対象となり得るところが特徴です。

 厚生労働省の告示で、対象業務となり得る例、なり得ない例が挙げられています。

対象業務となり得る業務の例

①経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務

②経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務

③人事・労使を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度の策定をする業務

④人事・労使を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行方法のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務

⑤財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務

⑥広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務

⑦営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務

⑧生産に関する企業に担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

対象となり得ない業務の例

①経営に関する決議の庶務等の業務

②人事記録の作成及び保管、給与の計算及び支払、各種保険の加入及び脱退、採用・研修の実施等の業務

③金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の申告及び納付、予算・決算に係る計算等の業務

④広報誌の原稿の校正等の業務

⑤個別の営業活動の業務

⑥個別の製造等の作業、物品の買い付け等の業務

ア 企画・立案・調査・分析の業務

 企画・立案・調査・分析の業務とは、これら相互に関連しあう作業を組み合わせて行うことを内容とする業務を指すのであって、企画部・調査部などの業務が当然にこれに該当するものではありません。

イ 業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があること

 適用対象は、業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務に限られます(労基法38条の4第1項1号)。

 業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるか否かは、業務の性質に照らして客観的に判断されるため、当事者が必要であると判断するだけでは適用対象にはなりません。

ウ 業務の遂行手段や時間配分の決定等に関して使用者が具体的な指示をしないこと

 裁量労働制の対象となるには、実際に労働者に業務の遂行手段や時間配分の決定等に関して広範な裁量が認められていることが必要であり、使用者が具体的な指示をしている場合には対象になりません(労基法38条の4第1項1号)。

⑵ 対象労働者

 企画業務型裁量労働制の対象となる労働者は、対象業務を適切に遂行し得る知識・経験等を有する者に限られます(労基法38条の4第1項2号)。対象労働者となるには、少なくとも3~5年の職務経験が必要とされています。

⑶ 労使委員会の決議・届出

 企画業務型裁量労働制を適用するには、一定の事項を定めた、労使委員会の5分の4以上の多数による決議及び労働基準監督署への届出が必要になります(労基法38条の4第1項)。

決議で定める必要がある事項は以下の通りです。

①対象業務の具体的な範囲

②対象労働者の具体的な範囲

③みなし労働時間

④健康福祉確保措置

⑤苦情処理措置

⑥当該労働者の同意を得なければならないこと、同意をしなかった労働者に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと

⑦その他厚生労働省令で定める事項(決議の有効期間(3年以内が望ましい)、労働者ごとの健康福祉確保措置・苦情処理措置に関する記録の保存、同意の撤回手続き、対象労働者の評価制度・賃金制度を変更する場合使用者はその内容を労使委員会に説明すること、労働者ごとの同意と撤回の記録の保存)

⑷ 労働者本人の同意

 企画業務型裁量労働制を適用するには、適用対象となる労働者本人の同意が必要になります。

 適用要件をまとめると、以下のとおりです。

4 企画業務型裁量労働制の効果(労働時間のみなし効果)

 企画業務型裁量労働制が適用されると、労働者が実際に何時間労働したかにかかわらず、労使協定等で定められたみなし労働時間を働いたものとみなされます。

 例えば、みなし労働時間が週40時間と定められていれば、労働者が実際には週48時間働いても、週40時間だけ働いたものとみなされ、残業代は発生しなくなります。

 企画業務型裁量労働制は、労働時間のみなし効果が発生するだけで、労基法の労働時間規制の適用が除外されるわけではありません。したがって、休憩、休日、時間外・休日労働、深夜労働に関する規定の適用は排除されません。みなし労働時間を週48時間とする場合には、36協定の締結が必要になりますし、8時間分の割増賃金の支払いが必要になります。

 しかし、実際には、どんなに長時間働いてもみなし労働時間しか働かなかったことになってしまうため、みなし労働時間を超えて働いた分の残業代は払われないこととなり、残業代制度の潜脱や長時間労働の温床になる危険性があります。

5 さいごに

 企画業務型裁量労働制の適用要件はかなり厳しいため、抽象的に対象業務に当たるように思われても、適法に企画業務型裁量労働制の対象となる労働者はほとんどいないでしょう。

 企画業務型裁量労働制の適用対象だから残業代は発生しないと言われても、諦めずに労働問題に詳しい弁護士にご相談ください。

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