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1 どうやったら退職できるの?

 会社を辞めようとしたら、会社から「後任を見つけてこないと退職させない」と言われて辞めさせてもらえなかったというような話を聞くことがあります。

 しかし、退職に会社の同意は必要ありません

 退職の効果が生じるには主に3つのパターンがあり、そのうちの一つとして労働者の一方的な意思表示により退職の効果が生じる「辞職」が認められています>詳しくはこちら)。

 <雇用契約終了の3パターン>

 辞職は、労働者の一方的な意思表示により退職の効果が生じるので、使用者の意思は関係なく、使用者の同意は必要ありません

 期間の定めのない労働契約の場合、原則として辞職を申し出て2週間経てば労働契約終了の効果が生じます(民法627条1項)。また、やむを得ない理由があるときは、2週間を待たずに直ちに労働契約を終了させることができます(民法628条、有期雇用契約に関する条文ですが無期雇用契約にも適用されると考えられています。)。

 つまり、労働者は、2週間前に会社に通知することにより、自由に会社を辞めることができるのです。退職の理由を言う必要もありません

2 退職は自分でもできる?

 退職は自分でも簡単にすることができます

 労働者には辞職の自由があるので、2週間前に会社に通知さえすれば、自由に会社を辞めることができ、会社の同意を得る必要もありません。

 会社が何と言おうと、辞職の意思を明確に示し、2週間経過後は会社に行かなければ退職することができます。辞職の意思を示すときは、後から会社に「聞いてない」と言われてトラブルにならないように、証拠が残る書面(内容証明郵便や電子メールでも大丈夫です。)で通知しましょう

 注意しなければいけないのは、上記の図でいう辞職の意思表示であれば会社の同意は不要なのですが、合意退職の申込みとみなされてしまうと退職の効果が生じるために会社の同意が必要になってしまいます。また、退職日に疑義が生じないように、退職日を一義的に特定しましょう。

 辞職を通知する際には、「退職させてください。」と会社の同意を求めるような文章ではなく(合意退職の申込みとみなされてしまうおそれがあります。)、「〇月〇日をもって退職します。」と明言しましょう。一般的に「退職届」は辞職の意思表示に使うもの、「退職願」は合意退職の申込みに使うものとされています。

 心配な方は、退職の方法について弁護士に相談してアドバイスを受けるといいでしょう。

3 退職代行って何?

 しかし、中には、会社が「退職させない」と言うだけでなく、退職を申し出た労働者に対して、懲戒解雇を行ったり、仕事に穴が空いて会社に損害が生じたとして損害賠償請求をするなどの嫌がらせ・退職妨害をしてくるケースもあります。

 なので、労働者からなかなか退職すると言い出せないというのが実態だと思います。

 退職代行は、会社を辞めたいけど自分では辞めることができない労働者の代わりに、会社に対して書面等で退職の通知をするサービスです。

4 退職代行は弁護士に依頼した方がいいの?

 退職代行には、大きく分けて、弁護士以外の退職代行業者が行うものと、弁護士が行うものがあります。

 弁護士でない退職代行業者は、比較的低額な料金で利用することができますが、弁護士法72条により法律事務(法律相談や交渉の代理などを含みます。)を業として行うことができません。なので、退職代行業者は、あくまで労働者の言ったことをそのまま伝達する使者(メッセンジャー)として書面を送付することができるだけで、会社から反論等があった場合に交渉を行うことはできません

 なお、近年労働組合を標榜し会社と交渉できることを売りとする退職代行業者もあります。

 しかし、退職代行業者の業務が弁護士法や労働組合法に適合しているのかは疑問もあり、退職の意思表示の有効性を会社から争われたり、退職代行業者を無視して労働者本人に連絡が来てしまうなどトラブルになる可能性も否定できません

 一方、弁護士は、退職代行業者に比べると料金が高額ですが(税込み5万5000円からお受けしています。)、退職の意思を会社に伝えるだけでなく、労働者の代理人として会社と様々な交渉ができますし、退職の意思表示の有効性が問題になることもありません。弁護士が行う退職代行を退職代理ともいいます。

 ※ 会社と交渉を行う場合には追加の着手金・報酬をいただくことがあります。費用についてはご相談の際にお問い合わせください。

 弁護士が会社に通知書を送る際には、「弁護士が代理人となったので、今後の連絡はすべて代理人を通して行い、労働者本人には直接連絡・接触しないようにしてください。」と記載し、以降の会社とのやり取りはすべて弁護士が窓口となるので、労働者が会社と直接やり取りをする必要がなくなるのもメリットです。

 また、弁護士は、労働者の代理人として、会社に対して離職票や源泉徴収票、退職金に関する書類等、退職手続きや今後の転職活動等に必要な書類の送付を求めます

 未払賃金や残業代がある場合には、これらを会社に請求することも考えられるでしょう。  

 退職に関して悩んでいる労働者は、労働問題に詳しい弁護士に相談しましょう。