Case191 会社が不正経理の疑いのある労働者の退職を認めないとしても退職届の提出から2週間で退職の効力が生じその後の懲戒解雇は無効とした事案・エスエイピー・ジャパン事件・東京地判平14.9.3労判839.32

(事案の概要)

 原告労働者2名による不正経理問題が発覚し、その直後に原告Aは即日退職する旨の退職届を、原告Bは即日退職する旨の退職届と有給休暇届を同時に提出し、その後出社しませんでした。会社は、原告らの退職を認めないとし、2か月以上経った後に原告らを懲戒解雇しました。

 原告Bは、会社に対して退職金を請求しましたが、会社は退職金規程上の不支給事由「懲戒解雇の場合」に該当するとして支払を拒否しました。

 本件は、原告らが、会社に対して有給休暇分の未払賃金、原告Bの退職金等の支払いを求めた事案です。

 また、原告らは、①会社が退職を認めない態度を取り書類の発行・返還を行わなかったこと、②被告社長が社内ミーティングで原告Aが不正行為を行ったと公言したこと、③会社が原告らを懲戒解雇した旨のメールを全社員に送信したことが不法行為に当たるとして損害賠償も請求しました。

 なお、懲戒解雇無効確認は訴えの利益を欠くとして却下されました。

(判決の要旨)

1 退職及び解雇の効力

 判決は、被告会社の就業規則に、退職願を提出してから14日経過で退職の効果が生じる旨の規定があることから、原告らが退職届を提出した14日後に退職の効果が生じたとし、その後の懲戒解雇の効力を否定しました。

2 有給休暇分の未払賃金

 原告Bが有給休暇届と退職届を同時に提出したことは、14日後までは有給休暇を取得する旨の意思表示であるとの合理的意思解釈をし、その分の有給相当分の未払賃金の支払いを認めました。

 原告Aは有給休暇届を提出しておらず、有給相当分の未払賃金は認められませんでした。

3 退職金

 判決は、原告らに懲戒解雇事由があると認めたものの、その経緯等に鑑み、原告Bの退職金請求が権利濫用とは認められないとして、原告Bの退職金請求を認めました。

4 損害賠償

 判決は、経緯等から原告らを懲戒解雇したことを広く社員に通知する必要はなかったとして、上記①~③を違法とし、慰謝料各55万円を認めました。

※控訴

Follow me!