労働基準法第7条 公民権行使の保障

(公民権行使の保障)
第七条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

~解説~

⑴ 「公民」とは、国家又は公共団体の公務に参加する資格のある国民をいいます。

⑵ 「公民としての権利」とは、公民に認められる国家又は公共団体の公務に参加する権利をいい、選挙権のほか、法令に根拠のある公職の被選挙権、最高裁判所裁判官の国民審査、特別法の住民投票、憲法改正の国民投票、地方自治法による住民の直接請求権の行使、これらの要件となる選挙人名簿の登録の申出などが含まれます。

⑶ 学説では、自ら選挙に立候補して法定の期間中に選挙運動をすることは被選挙権の行使として公民権に含まれるものの、他の立候補者のための選挙運動はこれに含まれないとされています。

⑷ 市会議員等の公職への就任について使用者の許可制とすることは本条の趣旨から許されません。

⑸ 「公の職務の執行」には、法令に根拠を有する、①議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、労働審判員、裁判員、法令に基づいて設置される審議会の委員としての職務等国又は地方公共団体の公務に民意を反映してその適正を図る職務、②訴訟法上の証人、労働委員会の証人等国又は地方公共団体の公務の公正妥当な執行を図る職務、③投票立会人等地方公共団体の公務の適正な執行を監視するための職務等が含まれます。

⑹ 使用者が労働者の請求を拒んだ時点で本条違反が成立し、実際に労働者の権利行使が妨げられたか否かは問わないとされています。

⑺ 本条はあくまで「拒む」ことを禁止しているのであって、例えば労働者が公職に就いたことで業務に支障が生じた場合に、これを理由に解雇等の不利益取扱いをすることまで禁止されているわけではありません。もっとも、解雇権濫用の問題は当然生じます。また、公民権の行使等は憲法上の権利なので、これを懲戒事由とすることは許されないと考えられます。

⑻ 公民権の行使等に要した時間について、有給にするか無給にするかは使用者の自由とされています。

⑼ 本条違反には罰則があります(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金、第119条1号)。

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