労働基準法第18条 強制貯金

(強制貯金)
第十八条
① 使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
② 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。
③ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。
④ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。
⑤ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。
⑥ 使用者が前項の規定に違反した場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。
⑦ 前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。

~解説~

⑴ 1項の「労働契約に付随して」とは、貯蓄契約を労働契約の締結又は存続の条件とすることをいい、貯蓄契約をしなければ雇入れないといった場合や、貯蓄契約をしなければ解雇するという場合がこれに当たります。

⑵ 1項の「貯蓄の契約をさせ」とは、労働者に使用者以外の第三者と貯蓄契約をさせることをいい、使用者が指定する銀行に貯蓄させる場合などが当たります。

⑶ 第三者機関に賃金の一部を積み立てて退職金の財源とする退職積立金制度は、これが強制加入の場合には本条1項に違反することになります。

⑷ 1項の「貯蓄金を管理する契約」とは、使用者自身が預金を管理する社内預金や、労働者名義の預金通帳等を使用者が管理する通帳保管のことをいいます。

⑸ 使用者による貯蓄金管理契約は、任意であっても第2項以下の一定の条件を満たさなければ適法になりません。条件は以下のとおりです。

①労使協定を行い、労基署長に届け出る(2項)

②貯蓄金管理規程を定め周知する(3項)

③利子をつける(4項)

④労働者が返還を求めた場合には遅滞なく返還する(5項)

⑹ 労使協定(2項)で定めるべき内容は、①預金者の範囲、②預金者一人当たりの預金額の限度、③預金の利率及び利子の計算方法、④預金の受入れ及び払戻しの手続、⑤預金の保全の方法です(施行規則5条の2)。また、通帳保管の場合は、通達により⑥預金先の金融機関名及び預金の種類、⑦通帳の保管方法、⑧預金の出入れの取次方法等について規定することとされています。

⑺ 貯蓄金管理規程(3項)で定める事項については特に定めはありませんが、上記労使協定で定めるべき内容はもちろん、それを具体化する内容であることが必要でしょう。

⑻ 行政官庁は、一定の場合に使用者に対して貯蓄金管理の中止命令をすることができ(6項)、その場合、使用者は遅滞なく貯蓄金を労働者に返還しなければなりません(7項)。

⑼ 本条1項違反(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金、119条)及び7項違反(30万円以下の罰金、120条)には罰則があります。

Follow me!