Case83 改正均等法施行前の男女差別を違法とした事案・兼松(男女差別)事件・東京高判平20.1.31労判959.85【百選10版16】

(事案の概要)

 原告ら女性労働者は、昭和32年から57年の間に被告会社に採用されましたが、当時会社では女性を準社員と位置付けて、男性とは異なる募集・選考方法をとり、賃金体系も男性より低く設定されていました。

 会社は、昭和60年1月に職掌別人事制度を導入しましたが、既存の従業員のうち主事補以下の男性は一般職に、女性は事務職に編入させ、男女の差を存続させました。事務職から一般職への職掌転換制度も設けられましたが、本部長の推薦など要件が厳しいものでした。

 平成9年4月には新たな人事制度が設けられ、職掌ごとの職務等級が設定されましたが、従来の事務職はすべて事務職掌に振り分けられました。職掌転換制度も変更されましたがなお要件は厳しいものでした。

 本件は、原告らが、同期の男性一般職との賃金格差は男女差別であるとして、差額賃金や慰謝料等の支払を求めた事案です。

 昭和61年4月に男女雇用機会均等法が施行され、募集・採用・配置・昇進に関して男女差別しないことが努力義務とされました。また、平成11年4月施行の改正均等法では、上記努力義務が差別の禁止に変更されました。これらに違反するかも争点となりました。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、入社当時の男女別採用・処遇は公序に反するものではなく、これは努力義務である昭和61年均等法施行後も変わらないとしました。

 また、平成11年均等法改正後も、既存の男女間には知識・経験の差が生じているため、合理的な職掌転換制度があれば処遇の差も違法とは言えず、会社の職掌転換制度は合理的であるなどとして、原告らの請求を棄却しました。

控訴審判決

 控訴審は、昭和60年1月の職掌別人事制度導入以降について、一部の原告らについて男性の一般職との賃金格差に合理的な理由が認められないとし、男女の差によって賃金を差別する状態を形成、維持した会社の措置は、労働基準法4条、雇用関係の私法秩序に反する違法な行為であるとしました。

 また、上記不合理な格差は、平成9年4月の新人事制度によっても実質的に是正されておらず、職掌転換制度に厳しい要件を設けていることも不合理であるとして、違法状態が継続していたとしました。

 損害額としては、差額賃金月10万円、既に退職した原告について退職金差額、慰謝料120万~180万円などが認められました。

※ 現在では、男女別のコースを設けることは明確に均等法に違反し違法です。

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