Case102 授業のみに従事する大学の非常勤講師が無期転換の例外の「研究者」に当たらないとされた事案・学校法人専修大学(無期転換)事件・東京高判令4.7.6労判1273.19

(事案の概要)

 原告労働者は、平成元年から語学の授業を担当する非常勤講師として被告法人と有期雇用契約を更新し続け、労働契約法18条1項に基づき無期転換の申込みをしましたが、被告法人は、無期転換申込権を認めない取扱いをしました。

 本件は、原告が被告法人に対して、無期転換を主張し、期間の定めのない労働契約上の地位の確認等を求めた事案です。

 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(科技イノベ活性化法)15条の2第1号は、「科学技術に関する研究者」(同法2条11項)について契約期間が10年を超えるまで無期転換申込権が発生しないという10年超えの特例を定めており、原告がこれに該当するかが争点となりました。

(判決の要旨)

一審判決(東京地判令3.12.16労判1259.41)

 判決は、科技イノベ活性化法の「研究者」というには、研究開発法人または大学等において、研究開発およびこれに関連する業務に従事している者であることを要するというべきであり、大学において研究開発およびこれに関連する業務に従事していない非常勤講師については、「研究者」とすることは立法趣旨に合致しないとしました。

 そして、学部生に対する初級から中級までの語学の授業にのみ従事している原告は、「研究者」に該当しないとして、無期転換を認め、期間の定めのない労働契約上の地位確認を認めました。

 原告は慰謝料請求もしていましたが、慰謝料は否定されました。

控訴審判決

 控訴審も、科技イノベ活性化法15条の2の趣旨は、研究開発に5年を超える期間を定めるプロジェクトが少なくないことを前提に、そのようなプロジェクトの終了前に雇止めがされることを回避するために、10年超えの特例を定めたものであるとして、原判決を維持しました。

※ 上告棄却により確定

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