Case185 年次有給休暇権の法的性質を明らかにし年次有給休暇の取得に使用者の承諾を不要とした最高裁判例・白石営林署事件・最判昭48.3.2労判171.16【百選10版43】

(事案の概要)
 国の林野庁白石営林署に勤務する原告労働者は、取得日を特定して2日間の年次有給休暇を請求し、当該2日間出勤しませんでした。署長は、原告の年次有給休暇請求を不承認とし、欠勤扱いにして、賃金から欠勤控除しました。
 本件は、原告が国に対して、控除された賃金の支払いを求めた事案で、年次有給休暇の取得に使用者の承認が必要かが争点となりました。

(判決の要旨)
一審判決及び控訴審判決
 一審及び控訴審は、労働者から請求のあった時季がそのまま年次有給休暇日となり、時季変更権の行使と別に使用者の承諾の有無を問題にする必要はないとし、原告の請求を認めました。

上告審判決
 最高裁は、年次有給休暇の権利は、労基法39条の要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって初めて生ずるものではなく、同条5項にいう「請求」とは休暇の時季の「指定」にほかならないとしました。
 そして、労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、同条5項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、労働者の指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するのであって、年次有給休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承諾」は観念できないとしました。一審、控訴審を維持しました。
 また、年次休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとしました。

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