Case189 元請会社の現場で起きた落下事故について下請会社の労働者に対する元請会社の安全配慮義務違反が認められた事案・大石塗装・鹿島建設事件・最判昭55.12.18労判359.58【百選10版50】

(事案の概要)

 本件労働者は、被告A社に雇用され、元請会社である被告B社の現場で働いていましたが、地上31メートルの足場で塗装工事に従事している際、地上に落下し死亡しました。本件労働者が命綱を付けておらず、養生網に隙間があったことが事故の原因でした。

 本件は、本件労働者の遺族である原告らが、A社およびB社に対して安全配慮義務違反及び不法行為に基づき損害賠償請求した事案です。

 使用者でない元請会社B社の責任が認められるかが主な争点となりました。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、A社及びB社が安全配慮義務を負うことを認めましたが、本件労働者が安全教育を受けていたにもかかわらず命綱を外すなど、本件事故が専ら本件労働者の過失によるとして、請求を棄却しました。

控訴審判決及び上告審判決

 控訴審は、労働者が、法形式としては下請会社と雇用契約を締結したにすぎず、元請会社とは直接の雇用契約を締結したものではないとしても、元請会社、下請会社間の請負契約を媒介として事実上、元請会社から、作業につき、場所、設備、器具類の提供を受け、かつ元請会社の一部門の如き密接な関係を有し、下請会社の工事実施については両者が共同してその安全管理に当たり、下請会社の労働者の安全確保のためには、元請会社の協力並びに指揮監督が不可欠と考えられ、実質上下請会社の被用者たる労働者と元請会社との間に、使用者、被使用者の関係と同視できるような経済的、社会的関係が認められる場合には元請会社は下請会社の被用者たる労働者に対しても下請会社の雇用契約上の安全配慮義務と同一内容の義務を負担するとしました。

 そして、A社及びB社は養生網を無断で開くことを予防することなども可能であり、養生網を開いたのが本件労働者の行為とも断定できないとして、A社およびB社の安全配慮義務違反を認めました。

 もっとも、本件労働者の過失割合を5割として過失相殺しました。

 上告審では、安全配慮義務違反自体は争われず、債務不履行に基づく損害賠償債務は履行の請求を受けたときに遅滞に陥るとされ、また債務不履行構成での遺族固有の慰謝料が否定されました。

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