Case215 コロナ禍の飲食店における整理解雇が手続きの妥当性が著しく欠けていたとして無効とされた事案・ アンドモワ事件・東京地判令3.12.21労判1266.74

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社が経営する居酒屋3店舗で店長をしていました。

 会社は、令和元年12月時点で全国に約300件の居酒屋をチェーン展開していましたが、令和2年初め頃から新型コロナウイルス感染症が拡大し、同年4月7日には緊急事態宣言が発出されたこともあり、令和2年2月の時点で約3億4700万円あった営業利益は、同年7月の時点ではマイナス約8億8900万円に落ち込みました。

 会社は、令和2年3月頃、収益性の高い約30店舗を残し、それ以外の店舗を撤退する方針を固め、同年4月上旬に原告の店舗を営業停止し、原告らに対し休業を命じました。

 会社は、全店舗の営業を停止し、最終的に存続させる店舗を約10店舗に絞り、原告を含む大多数の従業員を令和2年7月20日付で整理解雇しました。また、会社は令和2年7月以降の役員報酬を全額カットし、同月までに代表取締役を除くすべての役員が辞任しました。

 原告は、本件解雇前に、本社スタッフから電話で「近日中に重要な書類が届くので確認しなさい」という趣旨のことを言われただけで、会社から本件解雇についてそれ以上の説明はありませんでした。

 本件は、原告が本件解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。原告は慰謝料請求もしましたが棄却されています。

(判決の要旨)

1 人員削減の必要性

 判決は、約10店舗を残して撤退するという会社の経営判断は不合理ではなく、本件解雇当時、会社の人員削減の必要性は高かったとしました。

2 解雇回避努力

 会社は全店舗の営業を停止していたものの、少なくとも約10店舗は機を見て再開する意思を有していたのであり、事業廃止の場合に準じる状況にあったとはいえず、解雇回避努力を尽くす必要があったとしつつも、配転・出向の現実的可能性は乏しく他にとることができる措置も非常に限定的であったとしました。

3 人選の合理性

 撤退する店舗の従業員を解雇の対象者に選定することが不合理であるとはいえないとしました。

4 手続きの相当性

 もっとも、会社が原告に対し個別に整理解雇の必要性等を説明したり、協議したりする場を設けることが現実的に不可能であったとは考え難いこと、本件解雇前に原告らに対して整理解雇の必要性やその時期・規模・方法等について説明することができないほどの事情があったとはいえないことから、本件解雇には手続きの妥当性が著しく欠けていたとし、本件解雇は社会通念上相当でなく無効としました。

※確定

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