Case283 和解協議における労働者の提案内容を契機としてされた解雇が無効とされた事案・伊藤忠商事事件・東京地判令4.3.16

(事案の概要)

 原告労働者は、原告のハラスメント行為があったなどとして被告会社から反省文の提出を求められたことをきっかけに、代理人弁護士をつけて会社と紛争状態にありました。

 原告は、会社に対して、上司によるパワハラや降格処分の無効を主張する訴訟を提起し(第1事件)、同事件において和解協議が行われました。

 会社は、和解協議において原告が提示した在職を前提とする和解案の内容等から、もはや原告に改善の見込みはなく、信頼関係が回復する見込みもないなどとして、原告を解雇しました。

 原告は、会社に対して、解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位確認等を求める訴訟を提起しました(第2事件)。

 第1事件は棄却されました。

(判決の要旨)

 第2事件について、判決は、原告に解雇に値するほどの勤務態度、業務能率の不良及び協調性の欠如を認めることはできず、他方で、会社は、第1事件の和解協議における原告の提案を直接の契機として原告に対する解雇を決めたものといえるところ、和解協議における提案自体が解雇の客観的に合理的な理由たり得るということはできないとして、本件解雇を無効としました。

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