Case414 無期契約労働者と有期契約労働者との間の物価手当の差異が旧労契法20条の不合理な格差に当たるとされ無期転換後の損害賠償責任も肯定された事案・井関松山ファクトリー事件・高松高判令1.7.8労判1208.25

(事案の概要)

 被告会社と有期雇用契約を締結していた原告労働者らが、無期契約労働者との間に、就業規則上、下記労働条件の相違があることが旧労契法20条の不合理な格差に当たるとして損害賠償請求した事案です。

 原告らに適用されていた臨時社員用の就業規則では物価手当を支給する定めはありませんでした。また、賞与は支給しないとされていましたが、実際には賞与と同等の性質を有する寸志(10万円まで)が一時金として支払われていました。

無期契約労働者有期契約労働者結論
賞与ありなし(寸志の支給あり)不合理とはいえない
物価手当なし不合理

 一審判決後、原告らは無期転換権を行使し無期雇用契約に転換しましたが、無期転換者に適用される無期転換社員就業規則には、物価手当を支給する定めがなく、また賞与は支給しないとされていました。無期転換後の差異についても会社が損害賠償責任を負うかが問題となりました。

(判決の要旨)

1 賞与

 判決は、賞与を支給するか否かは使用者の裁量判断によるところ、長期雇用を前提とする正社員に対し賞与の支給を手厚くすることにより有為な人材の獲得・定着を図るという目的にも相応の合理性が認められるなどとして、有期契約労働者への不支給が不合理な格差に当たるとはいえないとしました。

2 物価手当

 物価手当について、年齢に応じて増加する生活費の補助の趣旨であり、年齢に応じた支給基準により一定額が支給されるものとされており、人事政策上の考慮に基づく差異であるとはいえないとして、有期契約労働者への不支給が不合理な格差に当たるとしました。

3 無期転換後の損害賠償責任

 判決は、無期転換就業規則は、原告らが無期転換する前に定められていることを考慮しても、当該定めについて合理的なものであることを要するところ、手当等の支給に関する限り有期契約労働者の労働条件と同一であること、労働組合との交渉がなく原告らが無期転換就業規則の労働条件を受け入れたという証拠もないこと、合理性について会社が特段の立証をしていないことから、会社が無期転換後の損害賠償責任を負わないということはできないとしました。

※上告棄却により確定

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