Case429 男性従業員の女子トイレへの侵入事件について会社が適切な事後対応を怠ったとして女性従業員に対する慰謝料が認められた事案・仙台セクハラ(自動車販売会社)事件・仙台地判平13.3.26労判808.13

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、被告会社店舗の女子トイレ内の掃除用具置場内に、男性従業員Aが潜んでいたのを発見しました(本件侵入事件)。Aは、原告に対して、女子トイレの写真を撮影して雑誌に売るのぞき見目的でトイレに侵入したと打ち明けました。

 原告は、その日のうちに店長に本件侵入事件について報告しましたが、店長は業務を優先し、「社内のことなので外には漏らさないように。後日Aが出勤したら事情を聴くから。」等として、当日のうちにAに対し事実の確認を含めた対応を取りませんでした。

 店長は、後日Aから事情聴取をしましたが、漫然とAの言い分を聞くだけで、Aの言い分が真実かどうかの確認をせず、原告に対して警察や社外に口外しないよう指示しました。

 原告は、店長らとの関係が悪化し、退職に至りました。

 本件は、原告が会社に対して、本件侵入事件について適切な事後措置をしなかったとして、損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、事業主は、雇用契約上、従業員に対して、労務の提供に関して良好な職場環境の維持確保に配慮すべき義務を負い、職場においてセクシャルハラスメントなど従業員の職場環境を侵害する事件が発生した場合、誠実かつ適切な事後措置をとり、その事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に調査すること及び事案に誠実かつ適切に対処する義務を負っているとしました。

 そのうえで、本件侵入事件について、職場環境を侵害する事案として、会社には誠実かつ適正に対処する義務があったとしました。具体的には、当日のうちにAに対して事情を聴取し、そのうえで、被害回復、再発防止のための適切な対処をする義務が存在していたとしました。

 そして、原告が会社に対して、本件侵入事件に対する適正かつ迅速な対応を求めたにもかかわらず、会社は、事件当日にAから事情を聴くのを怠った上、その後のAの言い分を安易に事実と受け止め、それ以上の対応を怠ったものであり、これら会社の不適切な対応が重なって原告が精神的苦痛を覚え、ひいては会社を退職するに至ったとして、慰謝料320万円を認めました。

※確定

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