Case440 育休延長や妊娠による業務軽減措置の請求、母性健康管理措置としての休業申出などを理由とする解雇が無効とされ妊娠中の解雇として不法行為に該当するとされた事案・学校法人横浜山手中華学園事件・横浜地判令5.1.17労判1288.62

(事案の概要)

 原告労働者は、被告法人が運営する学校で教員として勤務していました。

 原告は、第五子の出産に伴い、平成28年8月から同年10月まで産前産後休業を取得し、同月から平成29年8月まで育児休業を取得しました。原告は、育休終了の約1か月前である同年7月に育休延長の申出をし、平成30年2月まで育休を延長しました。更に、原告は育休終了の1か月前である同年1月に育休延長の申出をし、同年8月まで育休を延長しました。原告は育休中に副業をし、これに対しては法人からけん責処分を受けました。

 令和2年8月、原告は第六子出産及び体調不良を理由に、法人に対して労基法65条3項に基づく勤務軽減措置としてクラス担任を解くことを求めました。

 令和2年10月、原告は新型コロナウイルスへの感染不安を理由として、均等法13条1項に基づく母性健康管理措置による休業の申出をし、法人は原告を休業させることとし、休業中は賃金の6割を支給するとしました。原告は賃金が6割となることに不満を示し、賃金が控除されるのであれば在宅勤務をするなどと述べました。

 令和2年11月、法人は、以下の理由により原告を解雇しました。

⑴ 母性健康管理措置としての休業につき賃金が6割となることに不満を示し、賃金が控除されるのであれば在宅勤務をするなどと述べたこと。

⑵ 第五子の育休終了直前に育休延長の申出をしたことで人事配置等に混乱が生じた。

⑶ 第六子妊娠による勤務軽減措置の請求が2学期が始まる直前で、また母性健康管理措置としての休業申出が事前の相談なく突然行われたため人事配置に混乱が生じた。

⑷ 原告が運動会当日朝に子の看護休暇を取得し運動会を欠席した。

⑸ 原告がけん責処分に異議を申し立てた。

 本件は、原告が法人に対して、解雇の無効を主張して雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、解雇理由⑴につき、労働者の対応として直ちに不合理なものとはいえず、法人が休業決定に先立ち原告の意向を確認することも可能であったとして、解雇理由に当たらないとしました。

 解雇理由⑵につき、原告の育休延長の申出は育介法上適法であり、これを理由とする解雇は育介法10条に違反し許されないとしました。

 解雇理由⑶につき、労基法65条3項に基づく請求はいつでも請求できるところ、同請求を理由とする解雇は均等法9条3項により禁じられているなどとし、解雇理由に当たらないとしました。

 解雇理由⑷につき、看護休暇の取得を理由とする解雇は育介法10条等に違反し許されないとしました。

 解雇理由⑸につき、懲戒処分を受けた労働者の対応として何ら不合理なものでなく、通常想定され得るものであるとして、解雇理由に当たらないとしました。

 以上より、本件解雇を無効とし、本件解雇が均等法9条4項に違反する妊娠中の解雇にも当たることから不法行為を構成するとして、慰謝料30万円もみとめました。

※控訴

Follow me!