Case451 出張中の上司との移動時間も労働時間に算入して長時間労働を認定し、自死に対する会社と取締役の安全配慮義務違反を認めた事案・池一菜果園ほか事件・高松高判令2.12.24判時2509.63

(事案の概要)

 本件労働者は、フルーツトマト等の生産農家であった被告代表者に期間雇用職員として雇用され、被告代表者が法人化して被告会社を設立したことから会社に雇用され、会社の統括責任者・統括部長として勤務していました。

 本件労働者が自死したため、本件労働者の夫である原告Aが労災申請し、支給決定がなされました。

 本件労働者は、自死の約3か月前につき100時間を超える時間外労働をしており、その後も相当程度の時間外労働や連続勤務をしていました。また、自死の3日前には、被告代表者の娘である被告専務取締役から、本件労働者の有給休暇取得に関して強く不満を述べられ休暇を返上せざるを得なくなり、自死の前日には、被告専務取締役から感情的で激しい口調で仕事の改善点を伝えられていました。

 本件は、本件労働者の遺族である原告らが、会社、被告代表者及び被告専務取締役に対して安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

一審判決・高知地判令2.2.28労判1225.25

 一審判決は、本件労働者の時間外労働時間数の認定にあたり、実労働時間を前提に判断するのが基本的には相当としつつ、あくまで業務の過重性を判断するという点に留意して、該当性を評価し、認定を行うものであるという方針を示したうえで、少なくとも部下が上司とともに移動する形態での出張について、移動中も部下は心理的、物理的に一定の緊張を強いられることが通常であって、心身への負荷がかかるから、移動時間も労働時間として算入するのが相当であるとしました。

 また、被告専務取締役の言動は、客観的にみて極めて理不尽なものであったといわざるを得ず、明らかに指導の範疇を超えるものであったとしました。

 そして、会社は、本件労働者に対し、長時間労働による疲労や業務上の心理的負荷が過度に蓄積しないように注意ないし配慮する義務を怠ったとして、会社の安全配慮義務違反を認めました。

 また、被告代表者及び被告専務取締役も、本件労働者の時間外労働時間や自死直前の出来事の内容を認識し又は認識でいたのであり、会社の規模を考慮すれば取締役において容易に認識し得たものであるから、故意または重過失が認められるとして、いずれも会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うとしました。

控訴審判決

 控訴審判決も同様の責任を認めましたが、原告の1人が死亡したため、その相続人を当事者として損害を再計算しました。

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