Case29 自衛隊員に対する懲戒免職処分を無効とし処分の公表を違法とした事案・国・陸上自衛隊第11旅団長(懲戒免職等)事件・札幌地判令2.11.16労判1244.73

(事案の概要)

 自衛隊の自動車教習所で教官をしていた原告は、教習所内のテレビ購入費に流用するつもりで、私的訓練費用として隊員らから合計約6万円を支払わせる詐欺行為を行いました(本件行為)。なお、私的訓練費の支払いが必要なことは事実でした。

 第11旅団長は、本件行為が詐欺罪に該当するとして、自衛隊法に基づき原告を懲戒免職処分とする(本件処分1)とともに、国家公務員退職手当法に基づき一般の退職手当等の全部を支給しない旨の退職手当支給制限処分をしました(本件処分2)。

 第11旅団の広報担当が本件処分1を公表したところ、原告(匿名)が「訓練費を私費で負担しなければならないとうその説明をし」たなどと誤った新聞報道がされました。実際は、私的訓練費の支払いが必要なことは事実で(その使途が問題)、隊員に金銭的な被害はありませんでした。

 本件は、原告が、本件処分1及び本件処分2の取消しを求めるとともに、違法な本件処分1及び虚偽の事実が公表されたことにより名誉が毀損されたなどと主張し、国家賠償法に基づく慰謝料等の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、本件行為が刑法上の詐欺罪に該当するとしつつ、その動機及び態様において悪質であるとはいえず、被害者に実質的な経済的損害が生じていないことなどから、本件処分1は重きに失する不合理なもので、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱・濫用した違法な処分であり、取り消されるべきであるとしました。本件処分1の手続にも重大な瑕疵があるとしました。

 また、本件処分1を前提とする本件処分2も違法であり、取り消されるべきであるとしました。

 さらに、本件処分1は国家賠償法上も違法な処分であり、第11旅団の広報担当者が本件行為に関する重要な点について事実に反する内容を公表したことは名誉棄損に当たるとして、本件処分1がされたことによる精神的損害として100万円、名誉棄損による精神的損害として10万円の賠償を認めました。

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