Case81 長時間労働とパワハラによる自殺につき加害者である上司、会社及び代表取締役の責任が認められた事案・サン・チャレンジほか事件・東京地判平26.11.4労判1109.34【百選10版14】

(事案の概要)

 労働者のAさんは、ステーキ店の店長として、恒常的に1日12時間30分以上の長時間労働をしており、休日は数カ月に1度しかないこともありました。

 被告エリアマネージャーは、Aさんが仕事上のミスをすると「馬鹿だな」「使えねぇな」などと言ったり、頭や頬を叩いたりしていました。

 Aさんは、長時間労働と被告エリアマネージャーのパワハラにより、精神疾患を発症し店舗の非常階段で首を吊って自殺し、Aさんの父母である原告らが申請により労災認定がなされました。

 本件は、原告らが、被告会社に対して安全配慮義務違反及び使用者責任、被告エリアマネージャーに対して不法行為、被告代表者に対して会社法429条1項に基づく損害賠償請求をした事案です。 

(判決の要旨)

 判決は、被告エリアマネージャーが、恒常的に、社会通念上相当と認められる限度を明らかに超える暴言、暴行、嫌がらせ、労働時間外での拘束、プライベートに対する干渉、業務とは関係のない命令等のパワハラを行っていたとして、被告エリアマネージャーの損害賠償責任を認めました。

 また、被告会社の責任について、使用者は、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負い、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきであるとしたうえ、被告会社の労務担当者が、Aさんの長時間労働を認識していたか、少なくとも認識することができたこと、Aさんに対する指揮命令権限を有していた被告エリアマネージャーがパワハラの当事者であることから、被告会社はAさんが長時間労働やパワハラにより心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を怠っていたとして、被告会社の安全配慮義務違反及び使用者責任を認めました。

 さらに、被告代表者の責任について、取締役として被告会社が安全配慮義務を遵守する体制を整えるべき注意義務を負っていたところ、被告代表者が売上報告書により社員の労働時間を認識することは容易に可能であり、朝礼における被告エリアマネージャーの暴言、暴行も認識した又は認識し得たにもかかわらず、何ら有効な対策を採らなかったとして、故意または重大な過失により会社法429条1項の責任を負うとしました。

※ 確定

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