Case138 職種を特定されて雇用されたが就業規則上職種変更が予定されていた労働者の復職可否の判断にあたり従前の業務の他に配置可能な部署ないし担当可能な業務の検討をすべきであるとした事案・カントラ事件・大阪高判平14.6.19労判839.47

(事案の概要)

 原告労働者は、運転者として職種を特定され、被告会社において大型貨物自動車運転手として勤務していました。もっとも、被告の就業規則では業務の都合により職種の変更もあるとされていました。

原告は、慢性腎不全のために平成8年9月から欠勤、平成9年3月から休職しました。

 原告は、平成10年6月に運転手としての復職を申し入れましたが、会社は運転業務への就労は危険とする産業医の診断に基づき復職を拒否しました。

 原告は、平成11年1月に軽作業(デスクワーク)なら可とする産業医の診断書に基づき再度復職を申し入れましたが、会社が原告に対して持病が悪化した場合は退職とする等の復職条件を示したため話し合いは平行線をたどりました。

 その後、平成12年1月、原告が申し立てた賃金仮払いの仮処分において復職条件につき和解が成立し、原告は同年2月から軽い庫内作業、助手、短時間の運転業務等として復職しました。

 本件は、原告が復職拒否されていた平成10年6月から平成12月1月末までの賃金の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、職種を特定されて雇用された労働者が従前の業務を通常の程度に遂行することができなくなった場合には、原則として債務の本旨に従った労務の提供をすることはできないものと解されるものの、他に現実に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し、会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは、債務の本旨に従った労務の提供をすることができないとはいえないとしました。

 そのうえで、平成10年6月の時点では、原告が運転手としての復職を希望したことから、会社が運転手としての復職可能性のみを検討し、復職を不可としたことは不当ではないとしました。

 もっとも、平成11年2月1日の時点では、原告は業務を加減した運転者としての業務を遂行できる状況になっていたとして、会社が復職を不可としたことは不当であるとして、同日以降の賃金の支払いを認めました。

※上告

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