Case151 就業予定であった新規部署の廃止を理由とした外国人留学生に対する内定取消しが不法行為に該当するとされた事案・エスツー事件・東京地判令3.9.29労判1261.70

(事案の概要)

1 原告Aら15名

 外国人留学生であった原告労働者Aら15名は、被告会社の採用面接を受け、勤務場所を本件事業部とし、入社までにITエンジニア関連資格の取得を目指すことを求める旨記載された採用内定通知書を受領し、入社承諾書等を提出しました。

 その後、会社は、本件事業部の責任者が退職したこと等により財務状況が悪化し、本件事業部で原告Aらを受け入れることができなくなったとして、原告Aらの多くと連絡が取れない状況において原告Aらに対して一方的に内定取消通知を交付しました。

 本件は、原告Aらが会社に対して、内定取消しが債務不履行ないし不法行為に当たるとして損害賠償請求した事案です。

 会社は、仮に原告Aらとの労働契約が成立していたとしても、本件事業部に限定されていたものであったと主張しました。

2 原告B

 原告Bは、採用内定を受けていませんでしたが、会社から経理職で採用すると連絡を受けていました。

 しかし、会社から採用されなかったため、原告Bは、期待権侵害を主張して会社に対して慰謝料等の支払いを求めました。

(判決の要旨)

1 原告Aら15名

 判決は、会社の就業規則には会社に配転命令権がある旨の規定があることなどから、内定通知書に勤務場所が本件事業部であり、ITエンジニア関連資格を求める記載があったことをもって直ちに勤務場所及び職種が限定されていたとはいえないとしました。

 また、会社の財務状況が悪化したのは本件事業部につき会社が適切なマネジメント体制を構築しなかったこと等に由来し、人員削減の必要性が直ちに正当化されるものではないとしました。

 そして、会社は内定取消を回避すべくあらゆる手段を検討すべきであったところ、本件事業部の責任者の退職から2週間後に本件内定取消しをしたことは拙速であるうえ、本件内定取消しの時点で原告らのほとんどと連絡すら取れていなかったことから、会社が真摯な努力をしたとは認め難いなどとして、本件内定取消しは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、権利濫用として無効としました。

 判決は、内定取消しによる損害として、給与6か月分の逸失利益及び慰謝料各30万円を認めました。

2 原告B

 判決は、原告Bの期待権侵害を認め、慰謝料10万円を認めました。

※ 控訴

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