Case156 違法な配転命令が労働者の同意によって有効となるためには、その瑕疵を拭い去るほどの自由意思に基づく同意であることを要するとした事案・KSAインターナショナル事件・京都地判平30.2.28労判1177.19

(事案の概要)

 原告労働者は、定年後再雇用の嘱託社員として経営管理本部A監査室長を務めていましたが、経営管理本部部長付参事に異動する旨の配転命令1がされ、さらに関西営業本部B事業部参事に異動する旨の配転命令2が行われました。原告と会社の契約上、A監査室長の職責に対して月額5万円の補てん退職金を退職時に支給する旨の特約がありましたが、本件配転命令により支払われなくなりました。

 被告会社は、配転命令1及び2につき原告がこれに従う行動をしていることから原告の同意があったと主張しました。

 本件は、原告が配転命令1及び2の無効を主張して会社に対して損害賠償請求した事案です。

 原告は職種限定契約も主張しましたが否定されています。

(判決の要旨)

 判決は、配転命令がその本来の適法性いかんにかかわらず、労働者の同意によって有効とされるためには、配転命令が違法なものであってもその瑕疵を拭い去るほどの自由意思に基づく同意であることを要するとしたうえ、原告は配転命令1及び2がされたことからややむを得ずこれに従っていただけで、自由意思に基づく同意は認められないとしました。

 また、本件配転命令は、原告に補てん退職金が支払われなくなるという経済的な不利益を及ぼしてまで行う業務上の必要性に欠けるとして、権利濫用に当たり無効であるとし、補てん退職金及び慰謝料20万円の支払いを認めました。

※確定

Follow me!