Case221 定年間近の整理解雇を無効とし定年後の賃金3年分の損害賠償を認めた事案・尾崎織マーク事件・京都地判平30.4.13労判1210.66

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社のAセンター所長として勤務していました。

 会社は、債務超過の状態にあり、希望退職者の募集、本社ビルの売却、人員削減等を行ったものの、厳しい財務状況が継続していたことから、Aセンターの閉鎖を決めました。

 会社は、原告及び労働組合に対して、当初賃金は現状維持して京都勤務とする旨を提案していましたが、提案内容が二転三転し、給与25%カット等を前提とした京都勤務か早期退職を提案しました。組合側は、提案変更に納得していないとしていましたが、会社は原告を整理解雇しました。他方で、会社は東京支社で2名を新たに雇用していました。

 本件は、原告が本件解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。

 原告は本件解雇後に定年を迎えたため、当然に定年後再雇用契約が成立したといえるかも争点となりました。

(判決の要旨)

1 整理解雇の有効性

 判決は、Aセンターの閉鎖を進める一方で、原告に対する東京支店への配転の打診も行うことなく、同支店に配属する労働者を新規採用することは、一貫性を欠き、解雇回避努力を尽くしたとは評価できないとしました。

 また、労働組合との協議に際し、原告の処遇にかかる方針変更の理由について的確な説明をせず、組合側がいまだ条件のすり合わせ段階にあると認識している段階で、会社が一方的に期限を設定し、当該期限までに返答がなかったことを理由として解雇を通告したことから、誠実な説明・協議を行ったとは認め難いとし、整理解雇を無効としました。

2 定年後再雇用

 判決は、定年後再雇用について、再雇用を希望する者全員と再雇用契約を締結する状況が事実上続いていたとしても、賃金額を含めた核心的な労働条件に関する合意が存在しない以上、契約上の地位確認は認められないとしました。

 もっとも、再雇用に対する原告の期待が明らかである以上、違法無効な整理解雇は、雇用継続の期待権を侵害した不法行為に該当するとして、地域別最低賃金額の3年分の損害賠償を認めました。

※控訴後和解

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