Case222 学部廃止に伴う大学教員の整理解雇が他学部への異動が検討されていないことなどから無効とされた事案・学校法人奈良学園事件・奈良地判令2.7.21労判1231.56

(事案の概要)

 被告学校法人は、運営する大学の学部再編に伴う学部廃止や財務状況を理由に、教員として採用されていた原告ら労働者7名(うち4名は無期雇用、3名は有期雇用)を整理解雇(5名。うち1名は有期雇用契約の期間途中の解雇。)ないし雇止め(2名)しました。

 本件は、原告らが整理解雇ないし雇止めの無効を主張し、雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。

 このうち、雇止めされた2名(定年後再雇用)については雇止めが有効とされました。

(判決の要旨)

1 はじめに

 法人は、原告らは職種限定契約であるから、他職種・他科目担当への割当ても不可能であり整理解雇法理は適用されないと主張しましたが、判決は仮に職種限定の合意があっても整理解雇法理が適用されるとしました。

2 人員削減の必要性

 法人は全体でみれば資産超過の状態にあり、学部廃止後に新学部設置を検討していることなどから、学部廃止に伴う教員の過員状態の解消という人員削減の必要性自体は認められるものの、当該教員を解雇しなければ法人が経営破綻するなどの逼迫した財政状況ではなかったとして、当該学部の教員を削減する必要性が高かったとはいえないとしました。

3 解雇回避努力

 法人は希望退職や系列の小中学校の教育職や事務職への配転を打診していたものの、判決は、原告らは大学教員であり、高度の専門性を有する者であるから、教育基本法9条2項に照らしても、基本的に大学教員としての地位の保障を受けることができるとしたうえ、法人が原告らを他学部へ異動させることが不可能であるとはいえなかったなどとして、解雇回避努力が尽くされていたとはいえないとしました。

4 人選の合理性

 法人は所定の教員審査を受ける機会を原告らに付与して他学部への異動の可否を検討すべきところ、これを怠っていたとして、人選の合理性を否定しました。

5 手続きの相当性

 法人は多数回の団交に応じているものの、希望退職と事務職等への配転の希望を募るのみで協議が尽くされたといい得るかは疑問が残るとしました。

6 結論

 5名の解雇を無効とし、地位確認等を認めました。

※控訴

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