Case265 定年後の嘱託職員と定年前の正職員との間の基本給、皆精勤手当等、賞与の格差が労契法旧20条の不合理な格差であるとされた事案・名古屋自動車学校(再雇用)事件・名古屋高判令4.3.25
(事案の概要)
本件は、定年後再雇用で有期の嘱託職員となった原告労働者らが、正職員との間に労契法旧20条に違反する労働条件の相違があるとして、被告会社に対して差額賃金等の支払いを求めた事案です。
問題となった労働条件は、①基本給、②皆精勤手当及び敢闘賞(精励手当)、③家族手当、④賞与です。
(判決の要旨)
① 基本給(一部認容)
判決は、原告らの職務内容及び変更範囲は正職員定年退職時と嘱託職員時で相違がなかったこと、それにもかかわらず、原告らの基本給が正職員定年退職時の50%以下に減額されており、その結果、若年正職員の基本給をも下回っていることなどから、原告らの正職員定年退職時の基本給と嘱託職員時の基本給の相違は、嘱託職員時の基本給が正職員定年退職時の基本給の60%を下回る限度で、労契法旧20条にいう不合理と認められるとしました。
② 皆精勤手当及び敢闘賞(認容)
当該手当支給の趣旨は、所定労働時間を決略なく出勤すること及び多くの指導業務に就くことを奨励することであって、その必要性は、正職員と嘱託職員で相違はないとして、正職員定年退職時に比べて減額して支給するという労働条件の相違は、労契法旧20条にいう不合理と認められるとしました。
③ 家族手当(棄却)
従業員に対する福利厚生及び生活保障の趣旨で支給されているところ、正職員は嘱託職員と異なり幅広い世代の者が存在し得るところ、そのような正職員について家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由があるとして、嘱託職員に支給しないことの不合理性を否定しました。
④ 賞与(一部認容)
原告らの嘱託職員一時金と正職員の賞与の相違は、賞与が多様な趣旨を含みうるものであることや、嘱託職員の賞与が年功的性格を含まないことなどを考慮しても、労働者の生活保障という観点から看過し難い水準に達しているべきであり、原告らの基本給を正職員定年退職時の60%の金額であるとして、各季の正職員の賞与の調整率を上た結果を下回る限度で、労契法旧20条にいう不合理と認められるとしました。