Case321 就労時間中に従業員引き抜きの準備行為をしたことを理由とする懲戒処分がいずれも無効とされた事案・不動技研工業事件・長崎地判令4.11.16労判1290.32

(事案の概要)

 社外の人間であるAは、被告会社の従業員を引き抜き、被告会社と競業する業務を行う新会社を設立することを計画していました。

 原告ら労働者3名は、Aの計画に加担したとして、原告1(課長職)は懲戒解雇、原告2は諭旨解雇、原告3(課長職)は降格処分(管理職1級から一般職5級)の懲戒処分を受けました。被告会社は、原告らに対する懲戒処分を従業員等に公表しました。

 本件は、原告らが被告会社に対して、それぞれ懲戒処分の無効を主張し、地位確認や慰謝料(懲戒処分をしたことと、懲戒処分を公表したことに対するもの。)の支払いを求めた事案です。

 原告1と原告3は未払残業代も請求し、管理監督者性が争点となりました。

(判決の要旨)

1 懲戒処分の有効性

⑴ 原告1

 判決は、原告1がAと通謀して就労時間中にAと協議し、等級面談の際に所属課員に対し新会社への転職意向を確認したとして、競業避止義務に抵触する行為の準備行為をしていたとし、懲戒事由があったとしました。

 もっともAの計画は実現に至らず、実現可能性もさほど高いものではなかったこと、原告1は終始従属的な立場にあったこと、従業員への具体的な働きかけは等級面談の際に意向を確認したにとどまること、被告会社に具体的な影響が生じていないことなどの事情を考慮し、懲戒解雇は社会通念上相当であるとはいえないとして無効としました。

⑵ 原告2

 判決は、原告2が就労時間中にAに引き抜きできそうな部下の名前を挙げてAの計画を助長したとして、競業避止義務に抵触する行為の準備行為をしていたとし、服務規律違反があったとしました。

 もっとも、Aと通謀したとは認められず、部下に働きかけた事実も認められないことから、懲戒事由には該当しないとして諭旨解雇を無効としました。

⑶ 原告3

 判決は、原告3が就労時間中にAに引き抜きできそうな部下の名前を挙げ、協力する旨伝え、従業員等のメールアドレス一覧表を送信し、顧客情報開示の意向を伝えて、Aの計画を助長したとして、競業避止義務に抵触する行為の準備行為をしていたとし、懲戒事由があったとしました。

 もっとも、原告3は、Aの計画への参画について含みを持たせつつ消極的回答をした際に、引き連れていくことができそうな部下の名前を挙げ、協力の意向を伝え、これに沿う一定の行動をとったにとどまり、Aの計画への影響の程度が僅かなものであったなどの事情を考慮し、降格処分は社会通念上相当であるとはいえないとして無効としました。

2 慰謝料請求について

⑴ 違法な懲戒処分に対する慰謝料

 原告1及び原告3について50万円、原告2について100万円の慰謝料を認めました。

⑵ 懲戒処分を公表したことに対する慰謝料

 被告会社が従業員等に懲戒処分を公表したことは名誉毀損に該当するとして、原告1及び原告3について30万円、原告2について50万円の慰謝料を認めました。

3 管理監督者性について

 判決は、原告1及び原告3は、労務管理上の指揮監督権を一定程度有していましたが、経営の参画状況等を踏まえると、労務管理上、経営者と一体的な立場にあるとはいえないとしました。

 また、労働時間の裁量を有していたとはいえないとしました。

 賃金の待遇はある程度高く、成果給が概ね固定されていたのは時間外手当等を支給しないことを考慮する趣旨であったとも考えられるが、就業規則上はそのような趣旨は読み取れないとして、管理監督者性を否定しました。

※控訴

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