Case391 直接の指揮命令がなくても本部から代理店労働者に対する派遣法40条の6の直接雇用のみなし申込みが認められた事案・ベルコほか(代理店従業員・労働契約等)事件・札幌地判令4.2.25労判1266.6

(事案の概要)

 冠婚葬祭互助会員の募集および冠婚葬祭の請負等を行う被告会社は、B社やC社に営業代理店業務を委託していました。

 原告労働者らは、営業代理店(B社やC社)と雇用契約を締結してFAとして営業等の業務を行っていましたが、営業代理店から指示を受けることはほぼなく、被告会社から委託を受けた葬儀施行代理店等から指示を受けて業務を行っていました。

 営業代理店(B社やC社)は、労働者派遣業の許可を得ていませんでした。また、原告らは被告会社に対して直接雇用の承諾の意思表示はしていませんでした。

 本件の争点は多岐にわたりますが、派遣法40条の6第1項の直接雇用のみなし申込みの成否が争われた点を紹介します。

 原告らは、本件は営業代理店(B社やC社)から被告会社に対する無許可の労働者派遣に該当し、派遣法40条の6第1項2号により被告会社から原告らに対する直接雇用の申込みがあったとみなされるにもかかわらず、被告会社が原告らの承諾の意思表示を妨げたなどと主張して、被告会社に対して損害賠償請求しました。

(判決の要旨)

1 営業代理店(B社及びC社)は労働者派遣業を行う事業主に当たるか

 判決は、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる」「労働者派遣」(派遣法2条1号)を業とする「労働者派遣事業」(同条3号)に該当するか否かを判断するに当たっては、請負等の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業者であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し、①自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること、及び、②請負等の契約により請け負うなどした業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであることのいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とするのが相当であるとしました。

 本件では、①営業代理店(B社及びC社)は、原告らに対し、葬儀施行業務における各種の指示・管理を自ら行っていたとはいい難く、原告らの労働力を自ら直接利用していたとはいえないとしました。

 また、②営業代理店(B社及びC社)が、被告会社から委託を受けた葬儀施行業務を、自己の業務として、被告会社から独立して処理していたということもできないとし、営業代理店(B社及びC社)は労働者派遣事業を行う事業主に該当するとしました。

2 被告会社が労働者派遣の役務の提供を受けていたといえるか

 葬儀施行業務を直接実施し原告らに指示を行っていたのは被告会社ではなく、被告会社から委託を受けた葬儀施行代理店でした。

 しかし、判決は、被告会社は顧客と葬儀施行契約を締結し、その遂行のため葬儀施行代理店に業務を発注し、葬儀施行代理店の指示のもとで原告らFAが労働力として利用されていたことから、被告会社は、葬儀施行業務につきB社及びC社から労働者派遣の役務の提供を受けていたといえるとし、無許可派遣により原告らに対して労働契約の申込みをしたものとみなされるとしました。

3 不法行為の成否

 判決は、派遣法40条の6第1項は、は派遣労働者に対して派遣先と直接雇用を締結するかどうかについて選択権を付与したものであり、当該選択権は法律上保護されたものであるとし、派遣先は当該選択権の行使を妨害しないよう注意すべき不法行為法上の義務を負うとし、被告会社が原告らの選択権の行使を不当に妨げたとして、原告らに各10万円の慰謝料を認めました。

※控訴

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