Case392 労災保険法上の給付を受けている労働者も労基法81条の打切補償の対象となるとした最高裁判例・学校法人専修大学事件・最判平27.6.8労判1118.18

(事案の概要)

 被告労働者は、業務上疾病(頚肩腕症候群)により療養のため約6年間にわたって休業して労災保険給付を受けていましたが、原告法人から労基法81条の打切補償として平均賃金の1200日分の支払いを受けたうえで解雇されました。

 労基法は、19条1項で業務上の傷病により休業中の労働者の解雇を禁止したうえ、同法81条の打切補償を行った場合にはこの限りでないとしています。

 同法81条は、「第75条の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」と定めており、同法75条は労基法上使用者が負う療養補償の義務が定められています。

 本件は、法人が労働者に対して、雇用契約上の地位不存在確認を求めて提起した本訴に対して、労働者が法人に対して、労基法81条は、同法75条の療養補償を受けている場合について定めているのであり労災保険法上の給付を受けている場合には適用されないとして、本件解雇の無効を主張して雇用契約上の地位確認等を求めて反訴した事案です。

(判決の要旨)

一審及び控訴審判決

 一審及び控訴審は、労基法81条は、あくまで同法75条の規定によって補償を受ける労働者について打切補償を定めているのであって、労災保険法上の療養補償給付等を受けている労働者を対象としているとはいえないとして、本件解雇を無効としました。

最高裁判決

 最高裁は、労災保険制度は、労基法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提として、その補償負担の緩和を図りつつ被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、使用者による災害補償に代わる保険給付を行う制度であるということができ、このような労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労基法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであるとしました。

 そして、労災保険法上の療養補償給付を受ける労働者は、解雇制限に関する労基法19条1項の適用に関しては、同項ただし書が打切補償の根拠規定として掲げる同法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に含まれるとして、原判決を破棄して高裁に差し戻しました。

差戻審(東京高判平28.9.12労判1147.50)

 差戻審は、業務上の疾病による労務不提供の場合、労基法81条の要件を満たし、同条による打切補償がされたときは、特段の事情がない限り、当該解雇は社会通念上も相当と認められる(労契法16条)として、本件解雇を有効としました。

※上告棄却により確定

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