Case474 職員を退職させる目的で組織的に行われたハラスメント行為について国家賠償が認められた事案・東京都ほか(警視庁海技職員)事件・東京高判平22.1.21労判1001.5

(事案の概要)

 原告労働者は、警視庁海技職員として採用されましたが、警備艇の操縦が怖くて自信がないと拒否するなどしたため、他の職員から原告の勤務態度に不満が出ていました。

 原告は椎間板ヘルニアにより3年間休職した後復職しました。

 原告は、復職前後に、原告を退職させる目的で職場で下記のような様々なハラスメントを受けたとして、東京都に対する国家賠償請求などをした事案です。

・「欠格者」「この者とは一緒に勤務したくありません!」「舟艇課一同」などと記載された原告の顔写真付きポスターを掲示した

・シンナーにアレルギーのある原告に対して、課長がシンナーを示して「いい臭いすんな、ほら、この野郎、来い。」「慣れる訓練しろよ。毎日やってやる。」「辞表を持ってこい。命令だよ。」などと言った

・原告のロッカーにシンナーが散布され、原告のロッカーから劇物であるトルエン、キシレンが検出された

・課長が原告に対して、原告に関する週刊誌の記事を書くよう指示し、退職しなければ原告の記事を週刊誌に載せる旨述べた

・警備艇に乗る際に見張りとしてデッキの上で荷物をもって立つよう指示され、激しい雨の日でも船内に入れてもらえなかった

・冬の泊まり勤務の際、ストーブの灯油が全て空にされており、エアコンも使用できない状態にされており、灯油を持ってきてほしいと訴えた原告に対して、係長が「冬は寒いに決まっている。」「灯油なんかねえよ、馬鹿野郎」「死ねばいいじゃない」などと述べた

・主任らが、原告の乗船していた警備艇の拡声器で「この船には馬鹿が乗っています」「原告の税金泥棒、辞めちゃえよ」などと繰り返し述べた

・主任が、複数回に渡り原告に唾を吐きかけた

・代理が、原告に対して「煙草の火でも擦り付けてやろうか」「税金泥棒早く消えろ」などと言い、火のついた煙草を原告に当てた

・主事が、原告が警備艇の船主に乗った直後に警備艇を急後退させて離岸させた

(判決の要旨)

 判決は、上記行為を総合して考慮すると、舟艇課の職員や水上署の幹部において、原告の休職前の勤務態度にかんがみて、休職期間満了により復職するであろう原告の職場復帰を積極的に受け入れるというよりは、むしろ、原告には任意に退職してもらって職場の平穏と円滑な業務の遂行を維持する方が舟艇課ないし水上署としては望ましいという考えの下に、原告に対し、依願退職を働きかけていこうという合意が、少なくとも暗黙のうちに多数の意思によって形成され、上記行為が行われたとしました。

 そして、上記行為は、組織の計画的、統一的な意思により、原告を退職に仕向ける目的で行われた違法な行為であるとし、東京都に対して慰謝料150万円などの支払いを命じました。

※上告

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