【解雇事件マニュアル】Q6労基法20条と民法627条の関係は

(民法627条)
 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
② 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
③ 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。

1 民法627条1項との関係

 民法627条1項は、使用者からの解約の申入れの日から2週間を経過することによって労働契約が終了するとしており、民法上は解雇の予告期間は原則2週間で足りるとされている。一方で、労基法20条1項は、使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、原則として少なくとも30日前にその予告をしなければならないとしている。

 労基法20条1項は、民法上原則2週間で足りるとされている解雇予告期間を、労働者が突然の解雇から被る生活の困窮を緩和する趣旨から原則30日間に延長したものであると解されている(厚労省『労基法上』295頁)。

 したがって、労基法20条が民法627条1項の特別規定に当たり、労基法20条の適用がある場合には民法627条1項の適用が排除されることにはほぼ異論がない(厚労省『労基法上』304頁)。

2 民法627条2項及び3項との関係

 民法627条2項は、期間によって報酬を定めた場合、使用者からの解約の申入れは、次期以降についてすることができ、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならないとしている。また、同条3項は、6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、3か月前にしなければならないとされている。

 労基法20条と、上記民法627条2項及び3項との関係はどのようなものであろうか。

 学説上は、労基法20条の適用がある場合に、民法627条2項及び3項の適用を肯定するものも否定するものもある(厚労省『労基法上』304頁参照)。

 菅野ら『労働法』744頁は、労基法20条が民法に規定のない解雇予告手当の支払等についても定めを置いていることからすると、労基法20条の規定が適用される場合には、民法627条2項及び3項の規定も適用されず、解雇予告については専ら労基法20条が適用されるとしている。

 平安学園事件・大阪高判昭33.9.10労民9巻5号816頁及び日本青年会議所事件・東京高判昭42.1.24労判27号6頁も、民法627条2項について、労基法20条の規定が適用される場合には適用が排除されるとしている。

 『類型別Ⅱ』555頁も、労基法20条の適用がある場合には、同条は民法627条2項・3項に優先して適用されるものと解するのが一般的であるとしている。

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