Case518 他の従業員との口論について事実確認もなく一方的に行われた期間途中の解雇を無効とし慰謝料請求も認めた事案・レラ・六本木販売事件・東京地判平28.4.15労経速2290.14

(事案の概要)

 原告労働者は、平成12年4月に被告会社に正社員として入社し、平成16年9月まで勤務していました。原告は、結婚、出産を経て、再度会社で働くことになりました。会社では全従業員が正社員でしたが、育児の関係で原告はパート社員とすることとし、原告は、1年間の有期労働契約で平成21年2月2日から営業事務として勤務しました。契約は3回更新され、最後の契約は平成25年2月1日まででした。

 会社は、期間途中の平成24年2月29日付けで、①与えられた職務をこなせず、②他の従業員から指導、注意を受けても業務を改善せず、③かえって指導、注意をした従業員に反抗する態度をとり続けていたことを理由に原告を解雇しました。

 本件は、期間途中の解雇が無効であるとして、原告が会社に対して雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

1 期間途中の解雇の有効性

 解雇理由①について、判決は、会社において労働契約の継続を困難とするほどの重大な支障であると判断していたとは認め難いとしました。

 解雇理由②について、判決は、確かに、原告が掃除にかかる時間や灰皿交換の頃合い、お茶出しの頃合い等について何度も同様の注意を受けた旨が営業日報に記載されており、原告本人も「毎日言われることが同じ」であった旨の陳述をしていることからすると、会社において原告の能率向上の意欲に疑問を差し挟むことも理解できないわけではないとしつつ、しかしながら、このような場合にも、解雇が原告に与える不利益が大きいことに照らすと、会社としては、原告から個別に事情を聴取して原因を検証し、その内容に応じて適切な改善策を検討して経過をみたり、理由を詳細に記載した書面による警告や譴責、減給等の懲戒処分を実施して改善の機会を付与するなどの慎重な対応をとるべきであり、このような対応をとることなく意欲や態度が不良であり就業に適しないと即断することは適切なものとはいい難いとしました。そして、会社が、原告の主張について個別に事情を聴取して適切な改善策を検討して経過をみたり、原告に対して理由を詳細に記載した書面による警告をするなどした形跡はないとし、原告が過去に懲戒処分を受けたことがないことも考慮すると、会社が原告に十分な改善の機会を付与したものとは認め難いとしました。

 解雇理由③について、判決は、確かに、原告が、指導、注意をした従業員に対し、反抗し、不貞腐れるなどの態度をとったことがあることは窺われるものの、そのような態度をとり続けていたことを認めるに足りる的確な証拠はない上、B専務が、本件解雇の直接の契機となった出来事について、口論の原因は指導、注意をした従業員と原告のどちらにあるとも言えない旨の証言をしていることにも照らすと、被告において上記の態度が職場規律の維持に回復し難い重大な支障を来すものと判断していたとは認め難いとしました。会社は、同出来事について、原告が自分の責任を棚に上げて他の従業員批判を公然と展開し始めたと主張しましたが、会社による原告に責任があるとの評価を正当化するに足りる事情を認めるに足りず、かえって、原告の弁明を聴取することもないまま上記のように評価しており、十分な事実確認を経ずに一方的な評価を下したことが窺われるとしました。

 これらの諸点を総合考慮すると、本件解雇の時点で、解雇をすることが客観的に合理的で社会的に相当な理由は認められないとして、解雇は無効とされました。

2 雇止めの効力

 平成25年2月1日以降も契約が更新されるかについて、会社の従業員は全て正社員で、原告も元々は正社員であって、1年間の有期労働契約とされたのは、育児の都合による便宜上の措置にすぎないこと、契約が3回更新されており、通算3年を超えていること、更新時に契約書が作成されたり面談することなく自動更新されていたこと、B専務も原告の契約期間について認識していなかったことなどから、本件解雇の時点で既に原告が更新を期待する合理的理由が存在しており、平成25年2月1日をもって原告を雇止めすることはできないとして、地位確認を認めました。

3 損害賠償請求

 判決は、会社が、原告の弁明を聴取することもないまま一方的な評価に基づいて本件解雇をしたことについて、職場環境配慮義務違反があったとして、慰謝料20万円を認めました。

Follow me!