Case527 学生に対する複数のハラスメントを理由とする停職処分が教授会の議を経ていない手続上の重大な瑕疵があるとして無効とされた事案・国立大学法人愛知教育大学事件・名古屋地判令3.1.27労判1307.64
(事案の概要)
本件は、被告法人が設置する大学において教授として勤務する原告労働者が、学生に対するハラスメントを理由にされた停職6週間の懲戒処分(本件処分)の無効確認等を求めた事案です。なお、本件処分を理由とする損害賠償請求は棄却されています。
処分理由の概要は以下のとおりです。
①ゼミにおいて、学生Aに対し、発音が間違っていることを理由に100円の罰金を要求した。
②ゼミ及び授業において、学生Aを強く怒鳴った。
③ゼミにおいて、学生Aの大学院入学試験の英語の点数が受験生の中で一番低かったと、本人及び他の学生の前で話した。
④授業において、学生Bに対し、発音が間違っていることを理由に洋菓子の購入を要求した。
⑤授業において、学生Bが休学に至った理由は事業団への就職や公務員試験に失敗したためであると、他の学生に話した。
法人の懲戒規程には、教育・研究に係る事項について懲戒処分を行うには教授会の議を経ることとされていましたが、法人は教授会の議を経ることなく本件処分を行いました。
(判決の要旨)
判決は、処分理由②、③及び⑤について、学生の修学上の環境を害するハラスメントに該当するとしました。
処分理由①及び④については、不適切ではあるものの、「罰金」の金額が少額であり、学生から徴収した「罰金」や菓子は学生との茶和会等に利用して原告個人が費消するものではなかったことからハラスメントに該当しないとしました。
判決は、法人は、教授会の議を経ることをせず、重大な機関である教授会から意見を述べる機会を奪い、その意見を判断材料としないままに本件処分を行っているのであるから、教授会の議を経ることなくされた本件処分には、手続上の重大な瑕疵があるといえ、本件処分の無効確認等を認めました。
※確定