Case530 1年契約を4回更新された非常勤講師の更新の合理的期待の程度が高いとはいえないとしつつ能力不足による雇止めを無効とした事案・学校法人玉手山学園(関西福祉科学大学)事件・京都地判令5.5.19労判1308.78

(事案の概要)

 原告労働者は、平成28年4月に被告法人と1年間の有期雇用契約を締結し、本件大学において必修科目であるA語の科目を担当する非常勤講師として勤務していました。原告の契約は4回更新されましたが、5年目で授業評価及び成績評価を理由に雇止めされました。

 本件は、原告が法人に対して、雇止めの無効を主張して雇用契約上の地位の確認を求めるとともに、5年目での雇止めが無期転換を阻止するという不当な動機によるものであると主張して損害賠償請求した事案です(損害賠償請求は棄却されています。)。

(判決の要旨)

1 更新の合理的期待

 判決は、本件就業規則には、学園の財政状況、業務遂行状況、勤務状況、健康状態および教育課程編成の動向等の理由で契約更新を行わない場合がある旨明記されていること、同内容が労働条件通知書にも記載され原告も認識していたはずであること、非常勤講師は大学業務のうち教育分野の限られた一部を担当するにすぎず、短期雇用でも差支えのない業務内容であること、法人が原告に更新を期待させる言動をしたというような事情も見当たらないこと、本件労働契約は4回更新されたにすぎないことからすれば、原告の本件労働契約の更新に対する合理的期待の程度が高いとはいえないとしつつ、原告が担当するA語の科目は、一般的に大学で履修対象とされることが多い科目であり、しかも、本件大学では必修科目とされているのであるから、仮に将来的に学園の財政状況上・教育課程編成上の問題が発生する事態になったとしても、開講されるコマ数が大幅に減らされるとは容易には考え難い科目であること、原告は学期ごとに安定的に5~6コマを担当してきたことからすれば、恒常性のある業務といえなくもないから、4回にわたり契約更新された原告が、雇用継続に対する期待を抱いても不思議ではなく、かかる期待の程度を踏まえて、本件雇止めの肯否について判断するとしました。

2 客観的合理的理由及び社会通念上の相当性

 判決は、学生アンケートによる原告の授業評価が他の教員と比べて大きく下回っているとはいえず、原告の授業を受講する学生の不合格率も必ずしも多すぎるということはできないとし、法人が挙げる本件雇止めの理由は全く採用することができないとして、本件雇止めを無効とし、地位確認等を認めました。

※控訴

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