【解雇事件マニュアル】Q49試用期間か雇用期間かが争われた場合の判断基準は

 雇用契約に期間が定められているとき、それが試用期間か雇用期間かが争いになることがある。雇用期間であれば、有期雇用契約であるため、期間満了による使用者による一方的な解約は雇止めに当たる。他方で、試用期間であれば、無期雇用契約になるため、期間満了による使用者による一方的な解約は本採用拒否、すなわち解雇に当たることになる。

 神戸広陵学園事件・最三小判平2.6.5労判564号7頁は、使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適正を評価・判断するためのものであるときは、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、当該期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当であるとした。

 しかし、当該最高裁の判断については、当該事案の個別判断としては妥当であるものの、目的が労働者の適正評価・判断である場合には原則として試用期間(無期雇用契約)であるかのような一般論は、法律上有期雇用契約の目的は格別規制されておらず、適性判断や見習のために有期雇用契約を利用することも許容されている実態と合致しないなどとして批判が多い(菅野ら『労働法』274~275頁)。

 そして、福原学園(九州女子短期大学)事件・最一小判平28.12.1労判1156号5頁は、3年を限度とする期間1年間の有期雇用の後に、3年間の勤務成績を考慮して期間の定めのない職種に異動することがあるとの定めがあるなど、3年間の期間の目的が労働者の適性評価・判断であることが明らかな事案において、当該期間を試用期間であるとした原判決(福岡高判平26.12.12労判1122号75頁)を破棄し、3年限度の1年の有期雇用であるとした。

 このように、前掲神戸広陵学園事件の最高裁判決があるからといって、当初は有期雇用であることが明示された雇用契約における契約期間の目的が労働者の適正評価・判断であることをもって、当然にこれが試用期間であるということはできないであろう。

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