Case558 日本語能力の欠如を理由とする外国人労働者に対する試用期間途中の本採用拒否が無効とされた事案・R&L事件・東京地判令5.12.1労経速2556.23

(事案の概要)

 外国人労働者である原告は、令和3年10月25日、契約期間1年間、試用期間3か月の条件で被告会社にプロジェクトマネージャーとして採用されました。

 会社は、同年11月25日、①業務を円滑に遂行するための日本語によるコミュニケーションが取れない(通常の日常会話も理解できない、)、②職務経歴書記載の業務経験内容が、実務上の業務スキルと大きく乖離しており、経験不足が著しい、③会社の業務に対する意欲の欠如、を理由として原告を即日解雇しました。

 本件は、原告が解雇の無効を主張して、会社に対して残りの契約期間の賃金の支払いを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、原告が②虚偽申告をしたり、③意欲が欠如している事実はないとしました。

 また、①原告の日本語能力は「中級」であることが前提とされていましたが、「中級」の基準が明確に定まっておらず、少なくとも採用面接時に原告が会社関係者と日本語でやり取りした程度の日本語能力を前提に雇用契約が締結されたと認めるのが相当であるとしました。そして、原告が妻の名前を漢字で書くことができなかったり、被告従業員の「葬式はどこでやるのか。」という質問の意図が理解できなかったからといって、原告が「中級」程度の日本語能力を欠くとまでは認められないとしました。また、原告が会社が提供する週1回の日本語教室に通うなどの意欲を示していたことなどからすれば、試用期間3か月のうち約1か月しか経過していない時点で、試用期間満了時においても「中級」の日本語能力を有さないことが見込まれる状態にあったとは認められないとし、解雇を無効としました。

 なお、判決は、留保解約権の行使であることを理由に労契法17条1項の適用を排除していますが、これまでの裁判例と異なる判断であり、理由が不明確です。

Follow me!