【非正規格差】Case597 常勤講師と非常勤教員の賃金格差が不合理であるとし無期転換後の格差も含めて不法行為に当たるとした事案・学校法人明徳学園事件・京都地判令7.2.13労判1330.5【労働弁護士が選ぶ今日の労働裁判例】

【事案の概要】

原告労働者Xは、2010年4月から2022年3月まで被告学校法人Yが運営するA高等学校の常勤講師として有期雇用契約で勤務していましたが、2022年4月1日付けで無期労働契約に転換すると同時に、事務職員である常勤嘱託への配置転換命令を受けました。

Xは、専任教員(無期労働者)と常勤講師(有期労働者)との間の賃金の差は合理的な根拠のない差別であり、無期転換の前後を通じてXに対して常勤講師の賃金しか支払わず、専任教員の賃金を支払わなかったことは違法であると主張し、不法行為に基づく損害賠償を請求しました。

なお、講師から事務職員への配置転換の有効性も争われましたが、Xの職種限定合意の主張も権利濫用の主張も排斥されています。

【判決の要旨】

Xは常勤講師として5年を超えて勤務しており、専任教員に支給される年齢給の性質および支給目的(年齢、職務遂行能力、継続勤務に対する功労報酬)はXにも妥当するとされました。しかし、常勤講師の賃金は5年で昇給が上限とされており、これは不合理であると判断されました。

管理職ではない専任教員と常勤講師の間には、業務内容や業務に伴う責任の程度、職務内容および配置の変更の範囲において、大きな賃金差を設けるほどの違いは認められないとされました。

これらの理由から、就業規則および給与規程により常勤講師であったXと専任教員との間に賃金差を設けることは、2020年3月までは労働契約法20条に、同年4月以降はパート・有期法8条に違反し、Y法人がXに専任教員よりも低い賃金しか支給しなかった対応はXに対する不法行為を構成すると判断されました。

Xが無期転換した2022年4月1日以降についても、パート・有期法8条に違反するとまではいえないものの、不合理な賃金差があることに変わりはないため、同日以降のY法人の対応もXに対する不法行為を構成するとされました。

※控訴

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