【解雇事件マニュアル】Q77使用者に解雇の自由はあるか
民法627条1項は、当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができ、この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了すると定めており、民法上は労働者の辞職の自由と同様に使用者の解雇の自由も認められている。これは普通解雇(整理解雇を含む。)について定めたものである。
しかし、使用者により一方的に労働契約を終了させてしまう解雇は、労働者やその家族の生活に与える影響が大きいものである。そのため、解雇は正当な理由がなければ権利濫用に当たり無効であるという判例法理(解雇権濫用法理)が形成され労契法16条に明文化されたほか、労働法上様々な規制がなされるに至っており、民法上の原則が修正されている。労契法16条は、権利濫用法理であるものの、解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること、すなわち解雇が権利濫用に当たらないことの立証責任は使用者が負うこととされている。そのため、使用者が上記を立証しない限り解雇は無効である。
したがって、民法上使用者に解雇の自由が認められているといっても、それは形式的なものであり、実際は、使用者が、解雇が権利濫用に当たらないことを立証することができる例外的な場合に限り、使用者は労働者を解雇することができる。