【解雇事件マニュアル】Q81普通解雇の理由を後から追加することはできるか

1 解雇の意思表示時点で存在していた事由の追加

 使用者が、労働者に普通解雇を通告した際には主張していなかった事由を、解雇訴訟等において後から解雇理由に追加して主張することがある。このような解雇理由の事後的な追加は許されるのか。

 『類型別Ⅱ』393頁は、普通解雇は解雇権の行使であり、使用者の主張する解雇の理由が権利濫用の評価障害事実であることからすれば、解雇の意思表示の時点までに客観的に存在した事由であれば、解雇の有効性を根拠づける事実として主張することができるとするのが論理的な帰結であるとする。

 したがって、解雇時に使用者が認識していたか否かにかかわらず、解雇の意思表示の時点で客観的に存在していた事由であれば、後から解雇理由に追加して主張しても、それだけで失当とはならないというのが実務上の扱いである。

 しかし、使用者が解雇の意思表示時点で認識していなかった重大な事由が後から発覚した場合は格別、使用者が解雇の意思表示時点で認識していたにもかかわらず、当初解雇理由として主張していなかった事由については、使用者は当該事由を解雇に相当するものとして重要視していなかったというべきである。

 したがって、使用者が解雇の意思表示時点で認識していたにもかかわらず、事後的に追加した解雇理由が、決定的に解雇の有効性を基礎付けることはない。

 『類型別Ⅱ』394頁も、同様の趣旨を述べ、このような解雇理由の主張がされた場合、一般的には、その事由の心理に過大なエネルギーを注ぐ必要はないと考えられるとしている。

2 解雇の意思表示時点で存在していなかった事由の追加

 解雇の意思表示時点で客観的に存在しておらず、解雇後に新たに発生した事由は、既にされた解雇の理由にはなり得ず、使用者が後から解雇理由に追加して主張しても、当該主張は失当である。

 もっとも、新たな事由が発生した後に、使用者が労働者に対して新たな解雇の意思表示をすることはできる。当該解雇は、既にされている解雇が無効だとしても新たな解雇により雇用契約が終了しているという意味で予備的解雇に位置づけられる。

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