【解雇事件マニュアル】Q87 就業規則上の懲戒解雇事由は限定列挙か例示列挙か

 就業規則に懲戒解雇事由が列挙されている場合、これが、列挙されていない事由での懲戒解雇を許さない限定列挙なのか、列挙されていない事由での懲戒解雇も許す例示列挙なのかが問題となる。

 懲戒処分は就業規則などの労働契約上の根拠に基づいて行うことができるという契約説の立場からは、当然に就業規則上の懲戒解雇事由は限定列挙であることになる(菅野ら『労働法』653頁)。

 また、使用者は固有権である企業秩序定立権の一環として懲戒処分を行う権限を有するという固有権説の立場に立ったとしても、フジ興産事件・最二小判平15.10.10労判861号5頁が、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」としたように、罪刑法定主義類似の観点から、使用者が労働者に対して懲戒処分を行うためには、懲戒の種別と事由が契約上明記されていなければならないとされるため、やはり就業規則上の懲戒解雇事由は限定列挙であることになろう。

 したがって、就業規則に列挙されていない事由を懲戒解雇の理由とすることは許されない。

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