【不当解雇】Case630 解雇後によりよい待遇で再就職したからといって就労意思を喪失したとはいえないとされた事案・フィリップス・ジャパン事件・東京高判令7.5.15労経速2587.3
【事案の概要】
原告労働者Xは、2016年に被告Y社にパラリーガルとして採用され、その後、司法試験合格と弁護士登録、育児休業を経て復職しました。復職後の業務遂行状況が問題となり、Xは2021年7月からパフォーマンス改善計画(PIP)の適用を受け、同年12月に2022年1月付けでの解雇予告を受けました(本件解雇)。Xは、本件解雇により第一子の保育園入所資格を失うことを危惧し、直ちに就職活動を行い、同年3月にD社に月額給与約78万円、賞与165万円(初年度)などの労働条件で入社しました。Xは本件解雇の無効を主張して地位確認等請求訴訟を提起しましたが、後に地位確認請求を取り下げ、解雇後の未払賃金等の請求だけが残りました。XがD社に就職した時点及び6か月の試用期間を経過した時点でY社への就労意思を喪失し、その結果、解雇後の賃金請求権を失ったか否かが主な争点となりました。なお、賞与請求や損害賠償請求は棄却されています。
【判決の要旨】
判決は、Xの他社就労について、Xにおいては保育園の入所資格を確保し自らの職歴を確保するとの観点から直ちに就職活動を行う必要性に迫られ、その就職活動の結果として、D社への就職が決まったと認めるのが相当であるから、たとい賃金額や所定労働時間に関してD社での労働条件がY社よりも良好なものであるとの評価をし得るとしても、Xにおいて、D社に就職した時点で、Y社への就労意思が喪失したものとは認めがたいとしました。
もっとも、D社における6か月間の試用期間経過時点で、Xは就労意思を喪失したとして、当該時点までの賃金請求のみが認められました。

