Case226 会社のヤミカルテル等をマスコミに内部告発したことを理由とする不利益取扱い等を違法とした事案・トナミ運輸事件・富山地判平17.2.23労判891.12【百選10版57】

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社と他社との間で認可運賃枠内での最高運賃収受や荷主異動(顧客争奪)禁止を内容とするヤミカルテルが取り決められていく様子等を知り、これらをマスコミに告発し、報道されました。

 原告は、マスコミへの告発の前に会社の副社長への直訴や営業所長への訴えをしていましたが、ヤミカルテルの問題を明確には指摘していませんでした。

 また、原告は、公正取引委員会、労働組合、運輸省、日本消費者連盟にも告発しました。その結果、公正取引委員会が一斉立入検査を実施し、運輸省が被告会社らを厳重警告処分としました。

 会社は、原告を他の職員とは別の個室に異動させ、雑務しか与えず、それ以降一度も昇格させませんでした。

 本件は、原告が、内部告発を理由として不利益取扱いを受けたとして、会社に対して慰謝料や昇格していた場合との差額賃金相当額の損害賠償請求をした事案です。

(判決の要旨)

 判決は、会社が現実にヤミカルテルを結んでいたこと等が認められ、原告がこれらを違法又は不当と考えたことにも合理的な理由があるから、内部告発に係る事実関係は真実であったか、少なくとも真実であると信ずるに足りる合理的な理由があったとしました。

 また、ヤミカルテルは公正かつ自由な競争を阻害しひいては顧客らの利益を損なうものであり、告発内容に公益性があることは明らかであるとしました。

 そして、原告がマスコミに告発する前に社内で行った内部努力はやや不十分であったと言わざるを得ないとしつつ、仮に原告が社内で努力したとしても会社がこれを聞き入れてヤミカルテル廃止等の措置を講じた可能性は極めて低く、原告が十分な内部努力をしないまま外部の報道機関に内部告発したことは無理からぬことであり、内部告発の方法が不当であるとまではいえないとしました。

 判決は、以上のような事情から原告の内部告発は法的保護に値するとしたうえ、会社は内部告発を理由に原告に不利益な取り扱いや退職強要行為をしたと認定し、慰謝料200万円や差額賃金相当額約1000万円の支払いを認めました。

※控訴

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