Case239 市の責任者が記者に対してした性的暴行やその後の二次被害防止義務違反について国賠法上の責任が認められた事案・長崎市事件・長崎地判令4.5.30

(事案の概要)
 原告(女性)は、訴外会社に勤務する記者でした。原告は、被告長崎市の平和記念式典(本件式典)の取材に関連して、長崎市の原爆被爆対策部長であったC部長から、同意のない性的暴行(本件暴行)を受けました。
 C部長は、本件暴行の際に原告が拒んでいたことを認識し、原告に対して本件暴行が表ざたにならないよう働きかけていました。
 本件暴行後、C部長から虚偽の弁明を聞いたD会計管理者が、週刊誌の取材に対しC部長の弁明に沿う話をし、その内容が報道されるなどしました。
 本件は、原告が、長崎市に対して、本件暴行や二次被害等に係る責任があるとして国家賠償請求した事案です。

(判決の要旨)
1 本件暴行について
 判決は、C部長による本件暴行を故意による違法行為であるとしたうえ、C部長の職務には本件式典に関係する取材対応又はその窓口となることも含まれていたと認められ、C部長は外形的に本件式典に関係する取材への協力という職務に関連する行為に際して本件暴行に及んだとして、本件暴行は職務関連性を有するものと認められ、長崎市には本件暴行について国賠法1条1項に基づく責任原因があるとしました。

2 二次被害防止義務違反について
 判決は、長崎市は、C部長に対しては原告の二次被害にも留意して慎重な対応をとるべき旨の指導注意をし、D会計管理者に対しては事実関係が不明確な段階で本件暴行について言及しないよう指導注意すべきであったとしたうえ、長崎市が上記注意義務に違反したとして、この点についても長崎市には国賠法1条1項に基づく責任原因があるとしました。

3 慰謝料
 判決は、本件暴行や、二次被害防止義務違反によるD会計管理者による虚偽の情報の拡散により、原告の性的自由が侵害され、取材活動に支障が生じ、過熱した報道等により原告の名誉感情が害されたとして、慰謝料額を500万円としました。

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