労働基準法第5条 強制労働の禁止

(強制労働の禁止)
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

~解説~

⑴ 憲法第18条は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と規定しており、本条はその趣旨を宣言したものです。

⑵ 「暴行」とは、刑法208条に規定する暴行であり、労働者の身体に対し不法な自然力を行使することをいい、必ずしも傷害や痛み、接触を伴うものに限られませんが、労働者の意思に反して労働することを強制し得る程度であることが必要です。

⑶ 「脅迫」とは、刑法222条に規定する脅迫であり、労働者に恐怖心を生じさせる目的で本人又はその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加えることを明示または暗示することをいいます。労働者の意思に反して労働することを強制し得る程度のものであることが必要です。

⑷ 「監禁」とは、刑法220条に規定する監禁であり、一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって労働者の身体の自由を拘束することをいい、物理的に脱出できないようにする場合のみならず、心理的に脱出できないようにする場合も含みます。

⑸ 「その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」の例としては、「長期労働契約、労働契約不履行に関する賠償予定契約、前借金相殺、強制貯金」などが行政通達で挙げられています。

⑹ 本条に違反した使用者は、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられます(第117条)。

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