【解雇事件マニュアル】Q71 解雇理由証明書とは

(労基法22条)

 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

③ 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 使用者は、解雇された労働者が請求した場合には、当該労働者に対して、遅滞なく解雇の理由を記載した証明書(解雇理由証明書)を交付しなければならない(労基法22条1項)。同項は、解雇等退職をめぐる紛争を防止し、労働者の再就職活動に資するため、退職時の証明書の交付義務を定めたものである(厚労省『労基法上』341頁参照)。

 同項は、退職日以降(「退職の場合」とは、必ずしも退職と同時に請求しなければならないものではない(厚労省『労基法上』342頁))に労働者が請求した場合を想定しているが、解雇予告された日から退職日までの間に労働者が請求した場合も同様である(同条2項本文)。ただし、解雇予告以降に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合には、使用者は、当該退職日以降、当該解雇についての解雇理由証明書を交付する義務を負わない(同項ただし書)。同項は、解雇をめぐる紛争を未然に防止し、その迅速な解決を図ることを目的とするものである(厚労省『労基法上』341頁参照)。

証明書には、労働者が請求していない事項を記入してはならない(同条3項)。

 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の終業を妨げることを目的として、①労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、または➁証明書に秘密の記号を記入してはならない(同条4項)。同項は、労働者の就職を妨害するためのいわゆるブラックリストを禁止したものである(厚労省『労基法上』341頁参照)。

 同条1項ないし3項違反には30万円以下の罰金(労基法120条1号)、同条4項違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号)がそれぞれ課せられる。

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