【解雇事件マニュアル】Q89懲戒規定の類推適用は許されるか
就業規則上の懲戒規定を類推適用して、労働者を懲戒解雇することは許されるか。例えば、就業規則上、「経歴を詐称したこと」を出勤停止、減給、戒告の事由とし、懲戒解雇事由としていない場合に、経歴詐称の程度が極めて悪質であることを理由に、懲戒規定を類推して労働者を懲戒解雇することは許されるか。
懲戒処分は、企業秩序違反行為に対する特別の制裁措置であるから、罪刑法定主義類似の原則が適用され、就業規則上の懲戒規定を類推解釈して適用することは許されない(水町『詳解労働法4版』617頁)。立川バス事件・東京高判平2.7.19労判580号29頁は、経歴詐称を懲戒解雇(情状により出勤停止、減給、格下げ)事由とする規定を類推適用して、労働者に対して軽いけん責処分を行うことも許されないとしている。
したがって、就業規則上の懲戒規定を類推適用して、労働者を懲戒解雇することは許されない。