Case104 従業員に対するハラスメント行為や業務中の飲酒を理由とする普通解雇が無効とされた事案・摂津産業開発事件・大阪地判令3.2.26労判1259.55
(事案の概要)
被告会社が経営するゴルフ場のクラブハウス内にあるレストランで調理師として働いていた原告労働者の解雇事案です。
原告は、①無駄話が多すぎること、②従業員に対するパワハラ、③メニューを減らしてもいいとの指示に従わなかったこと、④レストランフロアと調理場の掛け持ち指示に従わなかったこと、⑤業務中に飲酒をしていたことを理由として普通解雇されました。
①③④については、そもそも事実が認められませんでした。
②については、原告が、冷蔵庫・冷凍庫の内部に従業員がいる際に扉を閉めたり電気を消したりしたこと、従業員の背中に氷を入れたこと等の事実が認定されました。
⑤については、原告が1週間から10日程度に1度、業務中にコップ少量のビールを飲んでいた事実が認定されました。
(判決の要旨)
判決は、解雇理由⑤(業務中の飲酒)について、原告が業務中に飲酒をしたことで酔った状態となり調理を行うことが出来なくなったり、客から苦情が出るなど、業務に支障がでたというような事情はないこと、繰り返し注意を受けたにもかかわらず飲酒を続けたという事情もないことから、解雇理由⑤をもって原告を解雇することが客観的に合理的で、社会通念上相当であるとはいえないとしました。
また、解雇理由②(パワハラ)について、冷蔵庫・冷凍庫は内部からも開けられることから、原告が従業員を「閉じ込めた」とまではいえないこと、原告の行為により従業員が体調を崩すなどして通院・治療を要する事態が生じたこともないこと、原告が同種の行為について懲戒処分や注意を受けたにもかかわらず繰り返したという事情もないこと等から、解雇理由②をもって原告を解雇することが客観的に合理的で社会通念上相当であるとはいえないとし、解雇を無効としました。
原告は、休憩時間が取れなかったこと等も主張しましたが、認められませんでした。
※確定