Case50 組合員らの言動を理由とした出勤停止処分及び転勤命令が無効とされた事案・長崎自動車事件・福岡高判令2.11.19労判1238.5
(事案の概要)
バス運転者であり同一の営業所に配属されていた原告らは、会社から各労働組合に対する担当車両の配分に関する、原告らと異なる労働組合に加入する従業員に対する「バスを取った。」等の言動を理由に出勤停止の懲戒処分を受けるとともに、それぞれ他の営業所配属する転勤命令を受けました。
本件は、原告らが、いずれの処分も無効であると主張して、①懲戒処分の無効確認、②懲戒処分に基づいて減額され、支給されなかった賃金の支払、③転勤先での就労義務のないことの確認、④不法行為に基づく慰謝料の支払等を請求した事案です。
(判決の要旨)
一審判決
一審判決は、①懲戒処分の無効確認、②懲戒処分に基づいて減額され、支給されなかった賃金の支払、③転勤先での就労義務のないことの確認、はいずれも認めましたが、④不法行為に基づく慰謝料の支払は棄却しました。
控訴審判決
控訴審判決も、一審と同じく、出勤停止は従前の懲戒事例と比較して明らかに重く、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとして、懲戒処分を無効としました。
会社は、原告らの行為が、一定の目的をもった集団行動であり、集団的なコンプライアンス違反であると主張しましたが、判決は、原告らの各言動は経緯が異なるものであり、集団的なコンプライアンス違反には当たらないとしました。
また、判決は、懲戒処分とほぼ同時期に原告らのみに対して転勤命令が発令されたことなどから、転勤命令の理由が純粋な業務上の必要性ではなく、懲戒処分と共通の理由によるものであるとしたうえ、集団的なコンプライアンス違反は認められないため業務上の必要性は肯定できないとし、一審と同じく転勤命令も無効としました。
さらに、各処分が不法行為に該当するとして、慰謝料各5万円及び転勤による通勤交通費の増加分(控訴審で追加)の損害賠償を認めました。
※確定