Case63 就業規則の周知性を否定し懲戒解雇を無効とした事案・河口湖チーズケーキガーデン事件・甲府地判平29.3.14

(事案の概要)

 菓子店の店長として小口現金の管理等をしていた原告は、架空の領収書を作成し小口現金を着服したこと、他の従業員にタイムカードを打刻させる等の方法で勤務していない時間について不正に賃金の支給を受ける等したこと及び無断欠勤を理由に懲戒解雇されました。

 原告が懲戒事由とされている各行為を行った時点では、まだ被告会社の就業規則(Y就業規則)は作成されていませんでしたが、グループ会社であるB社の就業規則(B就業規則)が被告会社の就業規則として流用されていました。

 原告は、懲戒を定めた就業規則の存在及び周知を争い、本件懲戒解雇が無効であると主張しました。

(判決の要旨)

 使用者が労働者を懲戒するためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくこと、その内容を、適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きがとられていることが必要です。

 判決は、B就業規則が被告会社の就業規則として用いられており、B就業規則に懲戒の種別及び事由が定められていたことから、原告の各行為がされた時点で、懲戒の種別及び事由を定めた就業規則が存在していたとしました。

 しかし、被告が「B就業規則を『就業規則』『河口湖チーズケーキガーデン』と記載されたシールが貼付されたファイルに閉じて従業員控室にある棚に備え付ける方法により、被告の就業規則として周知していた。」と主張したのに対して、判決は、雇用契約締結の際に被告の就業規則が備え付けられている場所を従業員に伝えた事実が認定できないこと、被告が主張するシールが貼付されていた証拠がないこと、労働条件通知書の「具体的に適用される就業規則名」欄が空欄になっていたこと等から、B就業規則がファイルに閉じられて従業員控室の棚に備え付けられていたとしても、それをもって従業員がB就業規則が被告の就業規則として用いられていること及びその内容を認識できたとはいえないとして、就業規則の周知性を否定し、本件懲戒解雇を無効としました。

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