Case88 周知性を就業規則の効力要件とした最高裁判例・フジ興産事件・最判平15.10.10労判861.5【百選10版21】
(事案の概要)
被告会社では、労働者代表の意見を得たうえで、懲戒事由を定めた就業規則を作成し、労基署長に届け出ていましたが、原告の職場には備え付けられていませんでした。
原告労働者は、得意先とトラブルを発生させたり、上司に反抗的な態度をとるなどしたとして、就業規則上の懲戒規程により懲戒解雇されました。
本件は、原告が懲戒解雇の無効を主張し、会社に対して雇用契約上の地位の確認及びバックペイの支払、取締役らに対して損害賠償請求した事案です。
(判決の要旨)
一審判決
一審は、本件懲戒解雇を有効とし、原告の請求をいずれも棄却しました。
控訴審判決
控訴審は、就業規則が備え付けられていなかったとしても、就業規則が効力を有しないということはできないとして、一審の結論を維持しました。
上告審
最高裁は、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとしました。
そして、就業規則の周知性を認定しなかった原判決を破棄し、本件を原審に差し戻しました。