Case64 労災保険法上の労働者は労基法上の労働者と同一であるとした最高裁判例・横浜南労基署長(旭紙業)事件・最判平8.11.28労判714.14【百選10版1】

(事案の概要)

 原告は、契約書を作成せずに、自己の所有するトラックを会社の工場に持ち込み、会社の製品の運送業務に従事してきました。原告は、会社の倉庫内での積み込み作業中に転倒し負傷したことから、労基署に労災申請しましたが、労災保険法上の労働者に当たらないことを理由に不支給決定を受けました。

 本件は、当該不支給決定の取消訴訟です。

(判決の要旨)

第一審判決

 一審は、時間的拘束や会社の業務指示等から、原告を労災保険法上の労働者と認め、請求を認容しました。

控訴審判決

 控訴審は、労働者と事業主との中間形態にあり、労働者であるか否かの判断が相当に困難な事例については、法令に違反していたり、当事者(殊に働く側の者)の真意に沿うと認められない事情がある場合は格別、そうでない限り、できるだけ当事者の意図を尊重する方向で判断するのが相当であるとして、原告は労災保険法上の労働者とはいえないとして、請求を棄却しました。

上告審判決

 最高裁は、労災保険法上の労働者は、労基法上の労働者と同一であるとしました。

 もっとも、原告がトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたこと等の事情から、原告は労基法及び労災保険法上の労働者とはいえないとして、原告の上告は棄却されました。

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