Case74 人事権による降格及びこれに基づく役付手当の減額が無効とされた事案・広島精研工業事件・広島地判令3.8.30労判1256.5

(事案の概要)

 被告会社は、心筋梗塞で倒れて休職中の原告労働者を、能力不足等を理由として課長から平社員に降格しました(本件降格)。これにより、原告に役付手当6万円が支給されなくなりました。なお、会社における職位は、部長、課長、次長、主幹、主任、職長、班長、平社員という序列になっており、原告は6段階一気に降格されました。

 また、その後、会社は、6万6000円だった原告の能率手当を、5万363円、3万2120円、1万3877円と徐々に減額していき、最終的には同手当を支給しなくなりました(本件減額)。

 本件は、原告が本件降格及び本件減額の無効を主張し、課長としての地位の確認並びに減額された役付手当及び能率手当の支払を求めた事案です。原告は、前社長や部長のパワハラに係る慰謝料も請求していました。

(判決の要旨)

 判決は、本件降格の効力につき、人事権の行使としての降格も、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められる場合には違法無効となるとし、その判断に当たっては①使用者側における業務上、組織上の必要性の有無及び程度、②労働者の能力又は適性の欠如の有無及び程度、③労働者の受ける不利益の性質及び程度等の諸事情を総合的に考慮することが相当であるとしました。

 そのうえで、本件降格は、会社側における業務上、組織上の必要性に乏しく、原告が課長の地位にふさわしい能力や適性を欠いているとも認め難いにもかかわらず、原告を大幅に降格し重大な経済的不利益を与えるものであるから、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利濫用に当たり違法無効であるとし、課長としての地位確認及び役付手当の支払を認めました。

 一方、本件減額の効力については、一定額の能率手当が支給されることが労働契約の内容となり原告の具体的な権利が生じていたとはいえず、本件減額が不当な目的をもってされたともいえないから、有効とされました。

 また、会社は原告に対して、違法な本件降格により経済的不利益を与えたこと、合理的な理由なく残業を許可しなかったこと、約4か月半にわたり仕事を与えなかったこと等を認定し、慰謝料100万円を認めました。

※控訴

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